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学級崩壊で病んだ私が、初めて教え子の結婚式に呼ばれた【こだま連載】

 私の隣に陣取り、だるそうに化粧を直し始めた。なんだか怖いな。早くここを出よう。そっと立ち去ろうとしたその時だった。金髪が突然「先生!」と両手を伸ばして抱きついてきた。目の前で起きていることがにわかに信じられなかった。私は強面の金髪とも知り合い以上の仲だった。  むかし親切にしてくれたお父さん達は相変わらず気さくに話しかけてくれた。引き算の全くできなかった女の子がお札をパチパチ弾いてお釣りを渡している。クラスで一番背の低かった男の子が180センチを超えていた。生徒たちは全国各地に散らばっているが、盆と正月には毎年集まっているらしい。会場の人々の顔や仕草を眺め、会話をひとつひとつ拾っているうちに気が付くと涙がぼろぼろ溢れていた。  照明が消え、重厚なドアが開いた。白無垢に身を包んだゆかりが目を大きく見開いている。これは緊張したときに出る癖だ。小学校時代から変わっていない。スポットライトを浴びた新郎新婦がゆっくり歩幅を合わせて着席するころには、私の化粧がすっかり剥がれ落ちていた。 ※当連載は、同人誌『なし水』に寄稿したエッセイ、並びにブログ本『塩で揉む』に収録した文章を加筆修正したものです。 <TEXT/こだま>
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