6歳から受験勉強、壊れるエリートたち…この競争にゴールはあるの?
受験シーズンもそろそろ佳境を迎える時期ですね。子役タレントの芦田愛菜(12)が偏差値70オーバーの有名中学に受かったことや、大学入試でもめて母親を殺害してしまった高校3年生の話まで、さまざまなニュースがありました。
いずれにせよ受験が人生を左右する要素になっていることは否定できません。しかし、じゃあ受験競争を勝ち抜き人気企業に就職をして、高い収入を得られたからといって必ず幸せにつながるかといえば、実はそうとも言い切れないのが難しいところ。
それを踏まえたうえで、改めてこの競争について考えてみたいと思います。英・エコノミスト誌が運営するサイト『1843』に「HIGH-PRESSURE PARENTING」(子供たちにプレッシャーをかける養育について)という記事が掲載されていました。
寄稿者のライアン・エイヴェント(エコノミスト誌・副編集長、米ワシントン州在住)は、小学校低学年の子供2人を持つ親。そのうちの1人、6歳の娘のクラスメートは、すでに有名大学への進学を見据えて準備に追われているのです。
一般に欧米では子供の自主性を重んじる教育が行われていると思いがちですが、実はそうではないのだそう。入学テストのスタイルが異なるので求められる能力が違うにしても、時間とお金をかけて入試の準備をする点では変わりがありません。
朝早くに子供を起こして、まずは読み書きと計算の特訓。そして、学校が終わったらお稽古事や課外活動のスケジュールが詰まっている。学業では失点をせず、それ以外の“社会へ自主的に貢献する”部分でより多くの加点を目指す。
これが、アメリカのトップ大学、ひいてはエリート階層へと続くレールであり、そこから道を踏み外さなかった人だけが完全無欠の幸福を手に入れられるというわけです。
それでも冷静に考えれば、小さいうちからこんな「馬鹿げた競争」(原文・rat race)に我が子を参加させるのは忍びないと分かるはず。なのに、どうしてその中に入ってしまうのでしょう? エイヴェントは、そんな親の心理を次のように分析しています。
「確かにこんな制度はどうかしていると嘆くのは簡単だろう。でもよそがドリル用のフラッシュカードで特訓しているのを見たら、“ウチもやらなきゃ”と思うものなのだ。」
(筆者訳、以降の「」内も同様)
親同士の射幸心が受験ビジネスを支えているのですね。ゆえに、親が“子供の将来のため”と熱心になるほどに、いつの間にか投資対象として有力かどうかという視線に変わってしまう。受験戦争を勝ち抜いた子供が、家や絵画と同じ資産のように扱われてしまうのです。そして最後には、“資産価値”、つまりは学歴や収入の高低によって、人生の勝者と敗者に分けられる―――。