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カップ麺の汁が腐った汚部屋に住む、普通のサラリーマン【あたしが出会った男たち】

黄ばんだタオルが1枚しかない

 お客様の自宅に行くときは自分用のバスタオルを持っていくのが必須ですが、この日はたまたま忘れてしまい、バスタオルを貸して欲しいと告げました。しかし返ってきた言葉に二の句が継げませんでした。 「タオルが1枚しかないの」  と、山積みになった洗濯物の中から、宝でも探すように黄ばんだタオルを、これ、と、出してきたのです。汚いとかそれよりも、このお客さんは普通の感性ではないなと思いました。 煙草の吸殻 いくら男やもめでも、最低限の掃除は出来るはずです。汚部屋でも苦にならず、平気でデリヘル嬢を呼ぶという行為に焦燥と諦観が入り混じっているようで、帰りたくなりました。けれど、どのようようなお客さんでもお金を受け取った以上仕事をしないといけません。なので、浴室でプレイをしました。  汚い布団に横になるのが嫌とはっきり言ったからです。浴室もカビはえていましたが、まだましだったし、季節が夏だったことが幸いでした。 「こんなに汚い部屋にデリ嬢を呼ぶの?」  帰り際にやんわりと質問をしました。お客さんは、うん、そう、とあたりまえじゃん的な口調で言いました。けれど、お客さんは、そのあと、小声になりながら続けました。

自覚はあっても片づけられない

「部屋が汚いのはわかっているよ。デリ嬢が嫌がるのも。でも、片せない」  お客さんは眉間にしわを寄せながら心痛の思いを吐露しました。  あたしは口を噤(つぐ)みました。  汚いのは故意ではない。病気だと思いました。外ではキチンと働き、最低限の身なりを整え仕事に行く。そのお客さんはきっと汚い方が自分らしくいられるのではないのか。落ち着くのではないのか。  そう考えるも、風俗嬢はやはりお客さんとしては見られないものなのだと思い、やや、複雑な気分に苛(さいな)まれました。   <TEXT/藤村綾>
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