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ゲイを両親にカミングアウトしたら…LGBT当事者の悲痛な体験

「パートナーシップ宣誓制度」が政令指定都市では初めて札幌市で制定されるなど、LGBTへの理解が深まりつつある昨今。それでもやはり、当事者たちが気軽にカミングアウトできるまでには至っていません。とくに家族間では、深刻な問題に発展することも少なくない様子。 LGBT 物心ついたころから自分の興味が同性に向いていることを自覚していたというケイスケさん(仮名/32歳)も、家族とLGBTを巡って壮絶な経験をしたひとり。「同じように悩んでいる人の力になれば」との思いから、重い口を開いてくれました。

カミングアウトした途端、母が泣き崩れた

 長年の不妊治療の末に生まれた男の子として、両親の愛情をたっぷり受けて育ったケイスケさん。明るい性格で友人も多く、表向きは年齢相応の男の子として過ごしていましたが、20歳を過ぎて同じLGBTの男性に出会ったことで、自分の感情に素直に生きる道を選んだといいます。 「彼らに出会って、ようやく居場所を見つけたと思ったんです。“ここでだけは素直な自分でいられる”、“今まで誰にも言えなかった思いを分かり合える仲間がいる”、そんな安心感を、はじめて感じました。ただ、両親には隠し続けようと思っていたんですけど……」  両親の前では今までと変わらず“息子”を演じていたそうですが、ある日母親から、「隠し事があるならちゃんと言って」と切り出されます。
LGBTカップル

写真はイメージです(以下同じ)

「仕草とか言葉遣いで、なんとなく感じ取っていたんですね。近所でも噂になっていたらしく、何度か聞かれたこともあるって。それで、もう隠し通せないと思いカミングアウトしました」  自ら切り出した母親に、「ある程度の覚悟はしてくれているのだろう」と思ったケイスケさん。しかし、事実を告げると、母親はその場で泣き崩れてしまったそう。 「母の中には、グレーゾーンのうちは“違うかもしれない”という希望があったんですね。でも、私が認めたことで“かもしれない”がなくなってしまった。母を悲しませた思い、受け入れてもらえないつらさ……泣き崩れる母を見ながら、いろいろな感情が湧いてきました」

「HIV検査を受けてくれ」洗濯も食器洗いも別々に…

 カミングアウトの翌日、ケイスケさんはリビングに呼ばれ、両親から思いもよらない言葉を聞かされます。 「うすうす感づいてはいたものの、やはり現実となると受け止められないというのが両親の意見でした。でも、唯一の息子なので、家族の縁を切るようなことはしたくないと。だから、この先も一緒に暮らすために、HIV検査を受けてくれと言われました」  しかも、検査結果が出るまでは、洗濯や食器洗いはすべて両親とは別のタイミングに自分でやること、入浴もいちばん最後で、出たあとは湯を抜いて風呂掃除をすることを提示されたそう。  もちろん、これはHIVに対する両親の誤解。HIVの感染経路は主に性行為による感染、血液を介した感染、母子感染で、日常生活で感染することはないのです。 洗濯物「ショックでしたよ。HIVにはかかっていないと伝えても、『結果を見ないと納得できない』とか言われちゃって。避けるような態度を取られるし、リビングにも居づらい雰囲気だったので、自宅にいるときはずっと部屋にこもっていました」
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埋められない、両親とのミゾ
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