“猫に救われた男”が相棒の猫と来日。映画になった彼の数奇な運命とは?
実際にホームレスを体験したルーク・トレッダウェイ
本を書くことによって、自分のなかにいる“悪魔”を追い出せた
――それは、辛い少年時代に原因があったのでは?
ジェームズ:オーストラリアでは母が僕を連れ引越しを繰り返したから、友達もできず、何度もいじめに遭った。そのうちに、色々な問題行動を起こすようになって、精神科に何度も連れて行かれました。その度に様々な病名をつけられて、多種多様の薬を投薬された。確かに、辛い子供時代だったかもしれない。
僕にとって本を書くことは、自分のなかの悪魔を追い出すためだったのかなと思います。過去について書きながら、自分の間違いを認めて受け入れるプロセスは、まるでセラピーのようだった。それが、まさか、自分の本がこんな風に世間を騒がせることになるとは思わなかったけれど。

誰にだってセカンドチャンスはある
――人生のどん底を経験したわけですが、現在の人生で大切にしていることはなんですか?
ジェームズ:今、こうやって自分のストーリーを皆とシェアできることが、今の僕にとってはかけがえのないことなんです。自分にできる範囲で誰かのために役に立つことをする。“声無きもの(ホームレス)”の非公式なアンバサダーとして活動しているつもりです。ボブと出会い、意図したわけではないけれど、ボブと僕のパートナーシップが世界中を旅して様々な人と出会う素晴らしいきっかけを作ってくれたことに感謝しています。
――今この瞬間にも孤独や絶望に悩んでいる人にどんなメッセージがありますか?
ジェームズ:そうだね……孤独に陥っている人は、まず心を開いて助けを求めてほしい。知らないだけで、色々な支援プログラムがあるんです。誰かに頼ることを恐れないで助けを求めて。そうすれば、必ず誰かが応えてくれるから。ボブと僕のストーリーから「人生にはセカンドチャンスはあるんだ」と感じてもらえれば嬉しいです。
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』は8月26日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
(C) 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
配給:コムストック・グループ
<TEXT/此花さくや PHOTO/林紘輝>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
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