では、笑顔とモテ声のメカニズムはどのようになっているのでしょうか。

こんな表情で話しているとモテ声にならない
「頬がこけて落ちていると、口から息が漏れている感じになります。
一方、
ほっぺたが上がると、鼻から頭の上の方に向かってまっすぐ息が流れるようになります。この口の形で話すと声の音色も変わり、息の通り道が広く開き、声帯で振動している音が頭の上の方向(副鼻腔)に向かって響き渡ります。
また、
口角を頬に向かって強く引き上げると、法令線(ほうれいせん)を薄くするのにも効果があります。普段はシワ消しのために行うのですが、良い声になるための訓練も全く同じ。笑顔が一番大事なんですね。つまり『息の通り道が開いている状態』にすることが大事なのです」
笑顔になると舌が前へ盛り上がり、喉が広く開きます。例えば「あー」と言うと口が大きく開きますが、舌は後ろに下がるので、息の通り道が塞がります。次に口角を上げて「いー」と言うと、舌が前に出てきて、喉の後ろは空間が開いて「息の通り道が開いた」状態になるのです。そうするとよく響くようになります。
「『あー』から『いー』へ続けて言うと、息の通り道が変わって、だんだんと声が上に響き渡るようになるのがわかります。声をモテ声にするには、
一度息を吐いて、姿勢を良くしてスーッと吸って息を吐く時に声を乗せる。
ただそれだけでは力が入ってしまい、喉に負担がかかりがち。そこで笑顔にして声が響く経路が開くようにしてあげる。笑顔と、しっかり吸って吐くことの両方が必要なのです」
さらに、日本語の場合のコツがあるといいます。
「日本語の場合、言葉の頭をはっきり言うことが大事です。頭の音をはっきり言うと、息と声が結びつきやすくなるのです。
個人差はありますが、モテ声の条件は、言っていることが聞き取りやすいこと。心地よく入ってくる声、聞きたいと思う声であることです。耳に入っているけれど耳障りではダメなんですね」
次回は、自分の声を「モテ声」にするための5つの要素や、日頃のNG習慣などをご紹介します。
― モテ声になるコツ Vol.1―
<TEXT/草薙厚子>
【森山剛氏プロフィール】
東京工芸大学・メディア画像学科准教授。慶応大学助手、米カーネギーメロン大ロボティクス研究所などを経て現職。現在、AI(人工知能)を用いた健康増進に関する研究を行っている