アメリカの白人の“闇”を浮き彫りにした映画『グッド・タイム』
こんにちは、映画ライターの此花さくやです。
11月3日に公開される映画『グッド・タイム』はロバート・パティンソンが主演の犯罪スリラー。ロバート・パティンソンといえば、クリステン・スチュワートと共演した映画『トワイライト』シリーズの紳士的なイメージが強いですよね?
今回ご紹介する『グッド・タイム』でロバートが体当たり演技を見せるのは、なんと下層階級に生きる犯罪者の役。
ドキュメンタリー映画のようなざらざらとした映像、観客を不安に陥れるシンセ音、どこか壊れた人間たち……息もつかせぬスピードで物語が展開していきます。
白人の下層階級に焦点を当てた本作は、ニューヨーク・クイーンズにおける“白人特権の崩壊”を示唆しているよう。
それでは、まず、白人特権についてお話したいと思います。
もちろん、現代のアメリカの法律で白人に特権はありませんが、米国勢調査局が2015年に行った調査によると、白人世帯の所得の中央値(すべての値を大きさ順に並べた際に中央にくる数値)が62,950ドル(約711万円/1ドル113円で換算、以下同じ)であるのに対し、黒人世帯のそれは36,898ドル(約416万円)とほぼ半分。そしてこの収入格差の比率は1967年からほとんど変わっていないんです。
アメリカ南部では人種差別的な州法が1964年まで合法でした。だからこそ、1967年当時はいまよりも人種差別が激しかったはずなのに、2015年の時点で黒人と白人の経済格差が縮まっていないのには驚き。
10年近くニューヨークに住んでいた筆者ですが、あからさまな白人特権を経験したことはありません。しかし、ニューヨーク在住の日本人男性から、彼が勤めていた証券会社で昇進したときに「君が白人だったら昇進が2年早かったと思う」とアメリカ人同僚に言われた、と聞いたことがあります。