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アメリカの白人の“闇”を浮き彫りにした映画『グッド・タイム』

映画にみるホワイト・トラッシュと白人の特権意識

 本作の舞台はニューヨークのクイーンズ。ロバート・パティンソンが演じるコニーは、知的障害者の弟ニック(ベニー・サフディ)と一緒に銀行強盗を行います。
『グッド・タイム』より_2

『グッド・タイム』より

 ずさんな計画による強盗は失敗。弟のニックだけが逮捕されてしまいます。知的障害のあるニックが弱肉強食の刑務所で生き残ることはできない……。そう思ったコニーはなんとかニックを脱獄させようとし、入院中のニックを病院から連れ出し、二人の逃避行が始まります……。
『グッド・タイム』より_3

『グッド・タイム』より

 強盗の計画そのものが稚拙すぎてこの兄弟が教育を満足に受けていない最下層の白人、“ホワイトトラッシュ”だということがありありと分かる冒頭。  ホワイトトラッシュとは、白人のなかの貧困層をさします。労働階級出身の白人本人が自分のことを冗談でホワイトトラッシュと呼ぶ場合もありますが、人種差別的なこの言葉は、本人以外が使う以外はタブー。  さて、無事にニックを病院から連れ出したコニーですが、予測もつかない事態が次々と起こり、ひょんなことからカリブ海系移民の婦人の家に転がり込みます。テレビで自分が指名手配されたことを知り愕然とするコニー。婦人が寝てしまったすきに17歳の孫娘クリスタル(タリア・ウェブスター)をたらしこんで逃亡を手伝わせようとします。  治安の悪い地域があるクイーンズなのに、見ず知らずの若者コニーを家に入れてしまう婦人の心理の奥底には、「病人連れの“白人”の若者がまさか悪いことはしないだろう」という白人特権意識があったようにも感じます。とくに、自分が“白人”であることを自覚してクリスタルを半ば恐喝まがいに誘惑したり、アフリカ系移民の男性に暴行を働いたりするシーンには、コニーの白人特権意識が見え隠れ。
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人種のるつぼ・クイーンズでは“白人特権”が崩壊
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