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まるで「エクソシスト」のような症状…謎の脳の病と闘った女性にインタビュー

“謎の病”で苦しむ人を、一人でも多く救いたい

『彼女が目覚めるその日まで』より_4

『彼女が目覚めるその日まで』より

――抗NMDA受容体脳炎を患っているのに精神疾患だと診断されていた大学生が、スザンナさんの記事のおかげで助かったそうですね。 スザンナ:それはエミリーのことですね。エミリーも最初は、私のように精神病だと診断され入院させられていたんです。ですが、ちょうど私のことをテレビや記事で見たエミリーの父親が医師に見せて、やっと正しい治療が受けられ、全快したそうです。  その後、エミリーと一緒に朝のテレビ番組に出たのですが、その番組がきっかけでマディソンという6歳の女の子が正しく治療されました。それから、エミリー、マディソン、私の3人でテレビに出演したのですが、テレビに出るたびに「テレビであなたのことを知って病名を突き止めました!」という人が必ずひとりは出てくるんです。本を出版したあとも何千通ものメールが届きました。なので、この映画を観て、ひとりでも多くの人が正しく治療されることを祈っています。 スザンナ・キャハランさん――本のなかで、抗NMDA受容体脳炎の再発率は25%だと書かれていますよね。 スザンナ:その再発率は毎年下がっていて、いまは13%ほどだと聞いています。再発率が下がっている理由は、毎年より多くの人々が抗NMDA受容体脳炎と診断されて、より早めの治療がされているからなんです。ということは、再発率は今後も下がっていくんじゃないでしょうか。そうはいっても、回復した直後はなにかが起きるたびに再発を心配していました。  でも、時が経つにつれ、あの闘病経験がまるで他人の経験のような気分になってくるんですよね。再発してもすぐに対処できるような態勢を整えていますが、再発のことはあまり考えないようにしています。再発の恐れに自分の人生を左右されたくないから。
『彼女が目覚めるその日まで』より_5

『彼女が目覚めるその日まで』より

――本の中で、サバイバーズ・ギルト(戦争、災害、難病から奇跡的に生き延びた人が、自分だけが助かったことに罪悪感を感じること)について語っていますよね。スザンナさんもそれを感じているのでしょうか。 スザンナ:はい、罪悪感はあります。本を出してから、「あなたのような治療を受けたにもかかわらず、私の子供は回復せずに、死んでしまった」というメッセージをもらったこともありますし。「なぜ、私がこの病気にかかったのか」「なぜ、私は治ったのか」という疑問は、これからも頭を離れることはないでしょう。でも、だからこそ私は、抗NMDA受容体脳炎の啓蒙活動を生涯続けることで、この罪悪感と向き合っていきたいと思っています。 スザンナ・キャハランさん『彼女が目覚めるその日まで』は12/16(土)より角川シネマ有楽町他全国ロードショー 配給:KADOKAWA (C)2016 ON FIRE PRODUCTIONS INC. <TEXT/此花さくや PHOTO/山川修一> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
此花わか
映画ジャーナリスト、セクシュアリティ・ジャーナリスト、米ACS認定セックス・エデュケーター。手がけた取材にライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、エディ・レッドメイン、ギレルモ・デル・トロ監督、アン・リー監督など多数。セックス・ポジティブな社会を目指してニュースレター「此花わかのセックスと映画の話」を発信中。墨描きとしても活動中。twitter:@sakuya_kono
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