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これって本当?映画『否定と肯定』に学ぶ、フェイクニュースの見分け方

 こんにちは。映画ライターの此花さくやです。ただいま今公開中の映画『否定と肯定』は、ユダヤ人歴史学者のデボラ・E・リップシュタット教授とホロコースト否定論者の歴史著述家デイヴィッド・アーヴィングの間で実際に起きた裁判を映画化したもので、フェイクニュースが溢れるデジタル社会に対して、真実の大切さに一石を投じた法廷ドラマです。

『否定と肯定』より

『否定と肯定』より

 そこで今回は、映画を参考に、ニュースを読み解くうえで注意すべきポイントをお届けします!


映画『否定と肯定』のあらすじ



 デボラ・E・リップシュタット教授はアメリカ・アトランタ州にあるエモリー大学で現代ユダヤとホロコーストについて教鞭をとる歴史学者。著書『ホロコーストの真実 大量虐殺否定論者たちの嘘ともくろみ』(恒友出版/1995年)で、ホロコースト否定論者たちを史上初めて調査し、歴史著述家のデイヴィッド・アーヴィングをホロコースト否定論者であり、極右翼だと批判しました。すると、アーヴィングはリップシュタット教授と著書の版元であるペンギン出版を名誉毀損で訴え、2000年にイギリスで裁判が開かれました。

『否定と肯定』より_2

『否定と肯定』より

 ところが、ホロコースト生存者と自分の声を裁判を通して世間に届けたいというリップシュタット教授の想いは弁護団に“否定”されます。なぜなら、生存者やリップシュタット教授の証言にみる小さな矛盾を見つけ攻め立てるのがアーヴィングの戦法だから。これ以上、生存者を侮辱する必要はないというのが弁護団の意見でした。リップシュタット教授にとって裁判でホロコーストを“肯定”してもらうには、裁判で証言したいホロコースト生存者の希望を“否定”すること。また、裁判で真実を主張したい自分自身を“否定”することでもありました……。

『否定と肯定』より_3

『否定と肯定』より

フェイクニュースを見分ける3つのポイント



 映画『否定と肯定』と、いまでもエモリー大学で教えるリップシュタット教授のレクチャー「ホロコースト否定説の嘘のもくろみ」(2017年4月に「TED x Skoll」で行ったもの)から、フェイクニュースを見分けるうえでのポイントを紹介します。え、これって本当? というニュースを目にした時、以下を確認してみてください。

1. 理性的な口調の裏に“過激な思想”が潜んでいないか?

 映画では、アーヴィングはロンドンの高級住宅に住む柔らかな物腰の紳士のように描かれています。裁判で発する落着いた論理的な彼の口調は、良識ある知識人のよう。ところが、弁護側が暴くアーヴィングの実像は、小さな子供に人種差別的な歌を歌ったり、ホロコースト生存者を辱める発言をしたりする人間でした。世界には様々な歴史修正主義がありますが、まずは柔らかな外見や口調のなかに過激主義が潜んでいないか注意してみることが大切だとリップシュタット教授は言います。

2. 相対的事実でなく、客観的事実か?

 アーヴィングの主張によると、アウシュビッツ収容所はガス室のない作業収容所であり、多くのユダヤ人収容者が亡くなったのはナチスによる虐殺ではなく、不衛生や病気が原因だというもの。チクロンBという毒ガス(殺虫剤)を屋根から送ったと言う弁護団に対して、収容所の屋根にはチクロンBを送る穴がないから収容所にはガス室がなかった、よってホロコーストもなかったと主張します。これは、ある事実の一部分が証明できないから、事実すべてが嘘だというふうに相対的に事実を見ています。

 それに対し、“相対的な事実は存在しない”とリップシュタット教授は反論。生存者や数々の物的証拠が残っている、紛れもない歴史的事実のうちどこか一部分が不鮮明でも、それによって事実そのものが否定されることがあってはならないと考えます。

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3つ目のポイントは?

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