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女の園に漂う“欲望、エロス”を描いた最新作。ソフィア・コッポラ監督インタビュー

『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』……。ガーリーカルチャーの旗手として、世の女性たちの心をガッツリ掴み続けて来たソフィア・コッポラ監督が、“心理スリラー”に挑んだ映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』が2月23日より公開されます。
ソフィア・コッポラ

ソフィア・コッポラ

 舞台は南北戦争下、森の中の女子寄宿学園。そこに残り、ひっそり暮らす7人の女性の中に、重傷を負った敵方北軍の兵士がひとり匿われることに。そこから始まる男と女たちの愛憎劇……。たまらなくスリリングな展開で、またも私たちの心をくすぐる新境地を開いた監督が、4年ぶりに来日しました。早速、お話を聞いてきました!

状況によってシフトしていく普遍的な“男女の力関係”

――監督は、“男女の力関係を描いてみたかった”とおっしゃっていましたね。 ソフィア・コッポラ(以下、ソフィア):そもそも私がこの物語(一度『白い肌の異常な夜』(’71)として映画化されたこともある、トーマス・カリナンの小説「The Beguiled」)に惹かれたのは、現代の私たちも共感できる、普遍的な男女の力関係にありました。そのバランスは状況によってシフトしていくのですが、南北戦争という、かなり誇張された状況の中だからこそ、非常にドラマチックに起きるのです。  それまで7人は世間から隔離されてきたので、普通の女の子たちより(男性に対する)欲求が強かったと思います。そこに入り込んだ負傷兵は、彼女たちの欲求や欲望を上手く察知し、それぞれが求めるものを的確に提供していきます。  若い子には守ってくれるお兄さん、アラサー女性に対しては恋人、そしてニコール・キッドマン扮する学園長には同世代の大人の男として振舞うのです。

女の園に漂いはじめる欲望、エロスの匂わせ方

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』

(C)2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

――10代の少女から40代の大人の女性まで、コリン・ファレル扮する兵士を前に、みなの態度が変化していく様子や、“欲望”の現れ方がとても興味深かったです。エロスをどこまで滲ませるかなど、各年代、各人ごとに細かな演出をされましたか? ソフィア:私は、彼女たちが男を誘惑しているのではなく、男が彼女たちを誘惑していると思いました。その誘惑に対し、女性たちが反応しているだけだ、と。  また、彼女たちはみな南部の女性、ということを忘れてはいけません。当時の南部女性は、男性のために美しく優雅にあるべき、男性のために生きる、という価値観で育てられました。でも、戦争に行って男性がいないのです。  エル・ファニングが演じた早熟な少女は、性に目覚めているのに対象がいなかったため、兵士に「チャンスがあれば、私はあなたのものになってもいいのよ」という態度をやたら見せますよね。キルスティン・ダンストが演じたアラサーの先生は、年齢的にも結婚相手を求めているので、また違った欲望の出し方をするのです。 ――学園長は冷静に振舞いますが、彼女も兵士に対する肉体的な欲望をかなり感じていたように感じたのですが……。 ソフィア:ええ、多分すごく自分の中で闘って、欲望を抑えようとしていますよね。敬虔なカトリック教徒な上、立場的にも子供たちを守らなければならない、という気持ちが強い。それでもやはり彼の身体を拭いているシーンなどでは、自分もやっぱり女だな、と欲望を感じてしまうのです。
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コリン・ファレル自身のイメージも役に投影
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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
2017年/アメリカ/1時間33分 監督/ソフィア・コッポラ 出演/コリン・ファレル、ニコール・キッドマンほか 配給/アスミック・エース 2月23日(金)からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開

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