Entertainment

女の園に漂う“欲望、エロス”を描いた最新作。ソフィア・コッポラ監督インタビュー

――一貫してソフィア作品での衣装は見どころの一つですが、今回は白く淡い色の衣装で統一されていました。 ソフィア:色あせたようなパステル調の衣装を選んだのは、私の中では、彼女たちは過去の亡霊に近い存在でもあるからです。ほわ~んと漂っているような雰囲気というか。もちろん戦時下で、何度も洗って色あせたものを着ているからでもありますが。  傷が癒えた兵士が一緒に食事をとる際に、女性たちがみな彼のために着飾るシーンで個性が際立っていたと思います。冒頭では、彼女たちは違うお花でもブーケのように一つにまとまっていたけれど、どんどん個性が出て来てバラバラになっていくのです。

コリン・ファレル自身のイメージも役に投影

――7人の中に入り込んだ“男”に対しては、どのような演出を? いい人過ぎてもダメ、悪人過ぎてもダメ、というバランスが絶妙でした!
コリン・ファレル

負傷兵マクバニーを演じる、コリン・ファレル (C)2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

ソフィア:どのキャラクターも、全面的な悪人や善人って魅力ないですよね。私は脚本を書く際、必ずそれぞれのキャラクターの頭の中に入り、この人は何を見て、何を感じるのか、と思いながら書いていきます。彼は、南軍に引き渡されるという危険も感じていたと思います。  でも女たちは柔らかいベッドに寝かせてくれて、世話をしてくれている。「客人なのか、囚われ者なのか」というセリフもありますが、彼は早い時期に彼女たち皆から好かれなければならなかったのです。彼はとにかく自分が生き延びるために、どんなことでもしようという気持ちから、色んな行動を選んでとっていったのです。 ――コリン・ファレルの起用は“アイリッシュ・アクセント”が大きな理由だったそうですが、7人の女性みなを惹きつけられるモテ男として、他にもどんな点が決め手になりましたか? ソフィア:登場人物がみな女性で男は一人だけ、というユニークなシチュエーションの本作を引き受けたコリンは、非常に自信を持った俳優だと思いました。だって上半身裸でベッドに横たわって動けないのに、そこで自分の存在感を出し、何人もの女性にお世話してもらうのですから。  コリン自身、すごくチャーミングで頭のいい人なんですよ。しかも、かつて多くの女性と浮名を流し、“バッドボーイ”というイメージもある。それもこの役にプラスになると思いました(笑)。加えてやはり彼のエキゾチックなアクセントは、どんな時代でも女性を魅了しますよね。

コッポラ一族の娘として、アーティストとして

――本作は昨年のカンヌ映画祭で、56年ぶりに2人目の女性監督が監督賞を受賞するという快挙を成し遂げました。華麗なるコッポラ一族の一人だからこそ、これまで逆に苦労もあったのでは? ソフィア:もちろん父の娘である恩恵にはたくさんあずかって来ましたが、同時にそれが足かせとなり、厳しい評価を得ることもありました。私にできるのは、自分らしい作品を作り続け、作品に語らせることしかない。本作は娯楽性の高い作品だと思いますが、アーティストとしては自分の直感を頼り、それを追い求めないといけないとも思っています。  私も経験を積み、映像美が上手く出せるようになったり、俳優との関係をうまく築けるようにはなったりしましたが、資質として変わったものは何もない。本作も『ヴァージン・スーサイズ』に似た作品になったと思います。
次のページ 
ニッポン大好きな理由は!?
1
2
3
Cxense Recommend widget

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
2017年/アメリカ/1時間33分 監督/ソフィア・コッポラ 出演/コリン・ファレル、ニコール・キッドマンほか 配給/アスミック・エース 2月23日(金)からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開

あなたにおすすめ