稲村亜美を襲った中学生を叱れる?“セクシー始球式”を広めたプロ野球の品性
3月10日に神宮球場で行われた中学生野球の関東大会開会式。この日、始球式を務めたのは“神スイング”でおなじみのタレント、稲村亜美さん(22)。しかし、彼女の身にとんでもないハプニングが起きてしまいました。
まず思い出すのが、2013年8月のヤクルト対DeNA戦での壇蜜(37)。ユニフォームのシャツだけを羽織ってマウンドへ上がると、おもむろにボタンを外し始める壇蜜さん。シャツを脱いだその下は、なんとスクール水着……。
あんまりきれいごとは言いたくないのですが、マウンドって神聖な仕事場ですよね。選手ひとりひとりの生活がかかっている。そこで試合そのものよりも刺激的な出し物をさせる無神経さに言葉を失いました。
そしてこうした始球式のたびに、スポーツ新聞には「ノーバン始球式」の見出しが踊る。“ノーバウンド”の意味ですが、明らかに“ノーパン”と間違えてクリックするのを期待しているのですね。だから女性タレントに下着の見えそうなコスチュームを着せるのとセットになっているわけ。
セーラー服姿の橋本環奈(19)や、黒いビキニの久松郁実(22)、赤いホットパンツの土屋太鳳(23)、ミニスカの川口春奈(23)に佐野ひなこ(23)。ためしに「始球式 ノーバン」で検索してみてください。げっぷが出るほどヒットします。
今回稲村さんに襲いかかった中学生たちはこれを日常的に目にして、さらには憧れの世界だと思って頑張っているわけです。それに対して「あまり褒められたことではないよ」と注意する年長者もいないのでしょう。いたらこんなアホみたいな始球式はなくなっているはずですからね。
だとしたら、責められるべきは子供たちではなく大人です。もちろん、どんな状況でも水着やセーラー服を禁止しろなどと言うつもりはありません。コンテンツとしての魅力のなさを女性の性で補おうとする発想が下等なのです。
日本リトルシニア硬式野球協会関東連盟が発表した謝罪文には、このように記されていました。
「今後このようなことが起きないよう役員一同指導者、選手の教育を続けてまいります」
残念ながら、指導者や選手を教育したところで問題は解決しないでしょう。なぜなら、今回の一件は常識や恥の有無に関する話だからです。それがトップのプロ野球から失われている現状こそが、事態の深刻さをあらわしているのです。
<TEXT/石黒隆之>
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始球式を終えスピーチをする稲村さん。すると、マウンドの周りで整列していた中学生の大群が、彼女めがけて一気に押し寄せてきたのです。SNSではこの動画が拡散され、「球児が稲村さんの体を触っていた」との情報も飛び交いました。
その後、稲村さんは一応“痴漢行為”を否定。大会の運営者も謝罪文を発表したのですが、騒ぎは収まりそうにありません。
だけど、盛りのついた中学生だけを悪者にするのはかわいそう。なぜなら、ここ数年のプロ野球の始球式を振り返ると、男の僕から見ても品性下劣の見本市。公の場であからさまに女性の性を売り物にする演出があまりにも多いのです。
子供は大人の背中を見て育つもの。だから、今回の一件も起こるべくして起きたとも感じたわけです。いくつか振り返ってみましょう。
スクール水着の壇蜜、ビキニの久松郁実…なぜ始球式がコレ?
子供は、大人たちを映す鏡
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4