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泥沼恋愛も依存症!? リスクが快感に変わるとき|斉藤章佳×中村うさぎ

斉藤章佳×中村うさぎの「依存症対談」Vol.2】

 痴漢は性欲の問題ではなく、「依存症」――おそらく日本で初めて痴漢について専門的に書かれた本である『男が痴漢になる理由』(イーストプレス)で、痴漢加害者に対する従来のイメージを覆した、精神保健福祉士・社会福祉士で大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さん。

 自身も若い頃に「買い物依存症」を患っていたエッセイストの中村うさぎさんは、斉藤さんの著書にある痴漢も依存症という考えに衝撃を受けたとともに、その根底に共通するものを感じたそう。

 左から、斉藤章佳さんと中村うさぎさん

左から、斉藤章佳さんと中村うさぎさん

 そんなお二人のトークイベントが、3月上旬、下北沢の書店「B&B」で開催されました。その内容を全3回にわたってお届けします。

死と隣り合わせの快感が一番強烈



中村うさぎ(以下、中村):痴漢みたいな性犯罪は、逮捕されればある意味、社会的な死じゃないですか。買い物依存症も破産というリスクが常に背後にあるわけです。それは言わば経済的な死。そういった“死のスリル”とセットになることで、達成感とか快感みたいなのが、一層際立つ気がします。

私、もし自己破産の心配がなかったらあそこまで買い物してなかったかもしれない。別に死にたいわけじゃないんですけど、死と隣り合わせの快感が一番人間にとって強烈なんじゃないかな。

斉藤章佳(以下、斉藤):確かに、痴漢は社会的な死だと思います。以前、性犯罪の再発防止プログラムのグループセッションで、問題行動をやめたことによって得られたものについて質問してみたところ、一番多かったのは「逮捕されない」でした。続いて、「家族を悲しませない」「仕事を失わない」。興味深いのは、「被害者が出なくて済む」と答えた人はほとんどいなかったこと。

また今度は逆に、痴漢をやめたことで失ったものについて聞くと、10秒くらいシーンとしたんです。そこには20人くらい参加者がいたんですが、やっと一人が挙手をして言ったんです。「生きがいです」って。

中村:なるほど。

斉藤:それを聞いた時、最初は何ともいえない嫌悪感が湧いてきたんです。何を言ってるんだと、1週間くらいモヤモヤしていました。でもその後、ある盗撮常習の患者さんが「盗撮をやめてると断食してるのと同じ」だと言っているのを聞いて、繋がったんです。彼らにとっては、まさに生きがいなんだと。だからこそ、手放すのが難しい。別の生きがいを持って生きていくというのは、誰にとっても相当難しいことですよね。

中村:わかります。買い物依存症だった時、モノクロームみたいな日常の中で「これを買ったら来月家賃も払えないし、破産するかもしれない」って思いながらも買うと、ものすごく世界がカラフルなんですよね。そこで初めて生き生きと自分の人生が色づいているような高揚感を覚えるんです。

もしかしたら痴漢の人もそうなのかもしれない。ただ痴漢の場合は、確実に相手に迷惑をかけてますよね。買い物は自分に迷惑かけてるだけだから。

斉藤:そうですね。

死のスリルでしか人生が色づかない、という問題



危険なものから離れられない私たち中村:痴漢の人には嫌悪感というか、何が生きがいやねん!と思うけど、気持ちはすごくわかる。私たちはどうしてこんなに自分が経済的に、社会的に死ぬかもしれないことでしか人生が色づかないのか。むしろ、そのことに問題があると私は思うんです。

自分を害するようなものから離れられないところって、誰しもが持っていますよね。恋愛が顕著な例だと思うんだけど、「この男と別れたら本当に私は自由だし、幸せになれるに違いない」って頭ではわかっているのに、どうしてもその男とズルズルしてしまう。その男と泥沼みたいな憎しみ合いをしている時が一番人生が色づいてるんですよ。生きている実感があるみたいな。

その男と別れてしまったら平穏無事な人生が始まるんだけど、果たしてそれは幸せなのかと思ってしまう。まあ、女の立場で言ってますけど、男の人だってそういう恋愛をすることがあるでしょう。この死のスリルの問題は一部の性犯罪者の問題ではなく、万人が抱えている問題だと思うんです。

斉藤:そうですね。私も今や2000人を超える性犯罪を繰り返す人と治療の場で出会ってきて、じゃあ自分は彼らと何が違うのかというと、自分も男で性欲はあるし、タイプの女性を見ると目で追い続けることはある。彼らと違うところってそんなになくて、紙一重だったりする。

中村:そうなんだ!

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