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レイプ、DV…暴力の根本にあるのは相手への「恐れ」|斉藤章佳×中村うさぎ

斉藤章佳×中村うさぎの「依存症対談」Vol.3】  痴漢は性欲の問題ではなく、「依存症」――おそらく日本で初めて痴漢について専門的に書かれた本である『男が痴漢になる理由』(イーストプレス)で、痴漢加害者に対する従来のイメージを覆した、精神保健福祉士・社会福祉士で大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さん。  自身も若い頃に「買い物依存症」を患っていたエッセイストの中村うさぎさんは、斉藤さんの著書にある痴漢も依存症という考えに衝撃を受けたとともに、その根底に共通するものを感じたそう。
左から、斉藤章佳さんと中村うさぎさん

左から、斉藤章佳さんと中村うさぎさん

 そんなお二人のトークイベントが、3月上旬、下北沢の書店「B&B」で開催されました。その内容を全3回にわたってお届けします。

男と女、それぞれの“暴力”

斉藤章佳(以下、斉藤):男性は精神的に極限まで追い詰められた時、自死(自殺)か(性)暴力を選択するという話をしましたが(詳しくは前回記事を参照)、以前、拘置所で継続的に面会していた強姦の常習者に「なぜ、あなたは強姦を選択するんですか?」と聞いてみたんです。すると、「復讐したいから」と彼は答えました。 中村うさぎ(以下、中村):誰に? 斉藤:女性に。 中村:ほう。 斉藤:彼は見た目は女性からモテるタイプなのですが、学生時代女の子にいじめられていて、その劣等感をずっと持ち続けていました。彼にとって強姦は、あらゆる暴力の中でも一番女性の人生を破壊できる行為なんです。殺人だと苦しみがそこで終わってしまうから。 中村:なるほど。 斉藤:復讐と表裏一体になっているのは、男性の加害者性の特徴だと思うんです。一方で、女性の加害者性の特徴は「見えづらいこと」だという話を以前うさぎさんとしましたね。 女性の加害者性は見えづらい中村:女の人は攻撃性がない、薄いと言われていますけど、そんなことないんですよね。ただ、本人たちがそれを自覚していなかったり、社会が気づいていなかったりする。 性犯罪については男性から女性に対するものが圧倒的に多いから男性の攻撃性ばかりに目がいってしまうけど、そもそも逆は、物理的に不可能。女の人が男の人をレイプしようと思っても力の差があるし、男のチ●コは正直者じゃないですか。もう世界一正直者ですよ(笑)。 斉藤:確かに(笑) 中村:でも、女の人はその気がなくても入れられてしまう。ただ、別のところで攻撃性を発散させていると思うんです。子供のいない私が言うとまた怒られるんだろうけど、例えば育児とか。子供をすごくコントロールしたり、抑圧したりすることで加虐趣味や支配欲みたいなものを満たしているかもしれない。 あと、女同士のマウンティングだって当然あるし、男に対するマウンティングだってありますよね。漫画『先生の白い嘘』(鳥飼茜)の中で、男子高校生がバイト先のおばさんに無理やりホテルに連れていかれてセックスを強要されて、断ったら「女に恥かかす気?」って言われて、無理やりやらされちゃうわけですよ。そのことが彼にとってすごくトラウマになって、担任の女教師に「先生、セックスはいつも男の責任なんですか?」って質問するんです。そこで女教師が言葉に詰まるシーンに、だよなぁって。 セックスについては、男の人にいつも責任がある、男の人がいつもリードしなきゃいけない、男の人はいつも加害者であるっていう世間的な決めつけゆえに女の人がそれを逆手に取っているケースもだいぶあると思います。
『先生の白い嘘』

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暴力の根本にあるのは、他者への「恐れ」
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