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レイプ、DV…暴力の根本にあるのは相手への「恐れ」|斉藤章佳×中村うさぎ

自立とは依存先を増やすこと

中村:以前、送っていただいたあのTEDの動画、ジョハン・ハリの講演にも通じますね。 斉藤:はい、「『依存症』-間違いだらけの常識」という講演。ハリは身内の薬物依存症者を立ち直らせようと、世界中の専門家に話を聞く旅に出たんですが、最終的にたどり着いた結論が、「アディクション(依存)の反対はコネクション(繋がり)」だった、という内容ですね。
中村:私、その言葉にとても感銘を受けたんです。私が買い物依存症になったのは、自立することにこだわっていたからなんですよね。特に家庭環境が悪かったわけじゃないんですが、昔から父親と折り合いが悪くて、ある日、父親に「お前は俺の稼ぎで飯食ってんだろ、俺のルールを曲げたいんだったら自立してから言えよ」って言われたんです。 専業主婦の母が父親に対して羊のように従順なのを見ていたのもあって、男に食わしてもらってたら一生こんな風に飼い殺しにされるわ! じゃあ自立してやろう、と。 でも、自立は経済的なことだけじゃなくて、人に頼らない、助けを求めない、弱みも見せないことだと思い込んで、一人でなんでも出来るフリをしていたら、急に落とし穴のように依存症にハマってしまった。自立を求めるあまり、孤立をどんどん深めてしまったんだと思います。 斉藤:「孤独」は依存症のキーワードの一つです。孤独って一番、人の心と体に悪いと思うんです。だから人には仲間が必要だし、繋がりが必要なんですよね。 中村:私、人に頼るのが本当に嫌いで、助けを求めるのも苦手だったんですけど、何年か前に病気をして足が悪くなって、夫や周りの人に手を貸してもらわなくちゃいけない状況になってから、少しオープンになれたんです。“情けない自分”になったんですけど、少し“開いた自分”にもなれた。 脳性麻痺を患いながら小児科医として活躍してきた熊谷晋一郎先生の言葉で、「自立とは依存先を増やすこと、希望とは絶望を分かち合うこと」というのがあるんですが、まさにそうだと思いました。 斉藤:有名な言葉ですよね。私も依存症治療で大切にしている言葉です。 中村:熊谷先生から聞いて感心した話があって、外でトイレ行きたくなって誰かの手を借りなければいけない時、必ず男女のカップルに声をかけるそうなんです。男は女の前で、女は男の前でいい顔したいから、利害が一致して十中八九助けてくれるって聞いて、なるほど! と。熊谷さんは男性にトイレに運んでもらって、お尻まで拭いてもらえるそうです(笑)。 人の助けがないと生活ができない人がどのように人を利用するか、という話は参考になるんですよね。「利用する」っていうと人聞き悪いけど、利用していいんですよ。快適に生きることは、生活の知恵。 それこそ私のように歩けなくなりましたとか、買い物依存症でしたとか、はたまた、痴漢がやめられませんとか、そういうマイノリティの変わった人々だけでなく、「依存先を増やす、絶望を分かち合う」ということは、現代人にとって普遍的に必要なことなんだと思います。 【斉藤章佳 プロフィール】 1979年生まれ。精神保健福祉士・社会福祉士/大森榎本クリニック精神保健福祉部長。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにて、アルコール依存症を中心に薬物・ギャンブル・性犯罪・クレプトマニアなどさまざまなアディクション問題に携わる。2016年から現職。専門は加害者臨床。著書に『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)など。 【中村うさぎ プロフィール】 1958年福岡県生まれ。同志社大学文学部英文科卒。OL、コピーライターを経て、作家デビュー。その後、壮絶な買い物依存症の日々を赤裸々に描いた週刊誌の連載コラム「ショッピングの女王」が話題となり、『女という病』『私という病』などエッセイ、小説、ルポルタージュに著書多数。近著は『他者という病』(文庫版)、『エッチなお仕事なぜいけないの?』。 <TEXT/女子SPA!編集部> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
女子SPA!編集部
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。twitter:@joshispa、Instagram:@joshispa
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