朝礼で社員全員サイコロトーク、社長が「朝活」に目覚めたせいで迷惑…
皆さんの職場で変なしきたり、ルールってありませんか?
現在は主婦をしている元OLのA美さん(34)。以前は広告代理店でWEB制作の仕事をしていたそうです。その広告代理店は、まだ30代の社長が立ち上げたベンチャー企業ゆえに整っていない部分も多く、15人程度の社員が一丸となり作り上げていく部分も多かったとか。
「特に社内規則については自分たちで提案しましたね。とはいえ、ワンマン社長だったので彼が口を出してくることもすごく多かったです。決まったはずのことが翌日にはひっくり返されることはしょっちゅうでした」
そんな風に試行錯誤を繰り返す日々を送っていた頃、社長が足を運んだ怪しげなセミナーで、おかしなことに感化されて帰ってきたそう。なんでも、「運気が上向きの会社は朝活に力を入れている」という情報を得たらしく、今後は朝礼に面白味を取り入れろというトップダウンでの社長命令があったのです。
「それまでの朝礼は、ごく普通に朝の挨拶を唱和するくらいのもので、5分も掛からずに終わっていました。でも、社長はそれが気に入らなかったみたいで『こんなに没個性な朝礼をするようでは、会社の未来が危うい』などと言い出し、私たちは新たな朝礼を考え出すハメになったのです」
A美さんたちは社長抜きで会議を行い、その時に出たアイデアをまとめて社長にプレゼン。「毎日代表1名がその日の抱負を語る」「唱和する言葉をもっと増やす」など、さまざまな提案をしたのですが、いずれも「面白くない」と却下。
そこで、ネットで目についた別の会社の朝礼方法をいろいろとドッキングさせ、ひじょうにボリューミィな内容の朝礼を作り上げることに。
「まず、社員全員が小話を披露する方式を取りました。フリートークだと喋れない人もいそうだったので『ごきげんよう』のようにお題をサイコロで決めて、それについて話してもらうようにしました」
目安時間は1人1分。15人分ともなれば単純計算で15分は必要になります。もちろん簡潔に話せない人もいるため、全員のトークが終わるまで30分以上かかることもあったそう。
「その後に、脳を活性化させためにラジオ体操。しかもダラダラやるのはNGで、とにかく本気で体を動かさないといけなかったんです。第1だけじゃなく、なぜか第2までやっていたので、終わった頃にはクタクタでした」
これで10分の追加。さらにその後も、20分かけて社内清掃を行い、挨拶の唱和をしてようやく朝礼終了。これを始業と同時に行うため、本格的に仕事をスタートさせるのは、始業時間から約1時間後だったとか。
「しかも、会社の始業時間はわりと遅めで11時からだったんです。もはや朝活とは言えないんじゃないかと社員全員が思っていましたが、社長は満足そうだったので口に出す人はいませんでしたね」
ちなみに、社長の気まぐれで朝礼の代わりに人狼ゲームが行われることもあり、これは長い時だと2時間ほど費すハメになり、これには完全に仕事に支障をきたしていたとも。
「お陰で朝礼の分だけ残業することが当たり前になって、気が付いたら毎晩のように終電帰宅でした。そして気が付いたら、会社はいっぱしのブラック企業に……。朝礼に時間を割いたりしなければ、こういう結果にならなかったのかもと思って、たまに悔いることがあります」
A美さんは出産のタイミングでその会社を退職したそうですが、現在は社長を含め社員は5人だけという寂しい状態だとか。皆さんの会社でも、朝礼はほどほどに。
―シリーズ 会社のヘンな「しきたり」 vol.3―
<TEXT/もちづき千代子 イラスト/鈴木詩子>
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社員15人ほどのベンチャー企業で
朝礼に面白味を取り入れろと社長命令が…
『ごきげんよう』のように社員全員でサイコロトーク
朝礼のせいで終電帰宅、ブラック企業化
もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama