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人間より猫が好き?世界的ピアニスト「フジコ・ヘミング」の知られざる素顔

恋多き人生、でも伴侶に選んだのは猫

『フジコ・ヘミングの時間』より

『フジコ・ヘミングの時間』より

 耳の治療のためにストックホルムに引越し、音楽教師の資格を得た後は、ピアノを教えながらドイツの都市を転々としました。とはいえ、それは生活のための引越しではなく、恋のためだったのだとか。自伝『フジ子・ヘミング 魂のピアニスト』(求龍堂刊)によると、男の人に夢中になっているときはピアノの音はさんざん……。でも、恋に破れて無心でピアノに向かうと不思議と音がよくなったといいます。 「恋をした人は、みんな、ろくな人じゃなくてね。猫のほうが信じられます」と語ったフジコ(映画資料より)。この度公開される映画『フジコ・ヘミングの時間』では、フジコが飾りつけた世界中にある美しい家で、猫と共に生活している姿を見ることができます。現在は東京の家に25匹、パリに2匹、サンタモニカに3匹の猫と、犬が2匹いるそう。

苦境に立たされても、自分を信じ続ける

苦境に立たされても、自分を信じ続ける 日本のドキュメンタリー番組をきっかけに話題の人となったフジコは、60代後半で遅咲きのデビューを果たし、人気ピアニストになりました。世界を股にかけて行われるコンサートの数は年間約60本。お気に入りのアンティークと猫に囲まれた家で過ごす微笑ましいフジコと、ステージ上で神がかったパフォーマンスを見せるフジコは、同一人物とは思えません。  映画では、2017年12月1日に東京オペラシティで行われたソロコンサートで撮影された「ラ・カンパネラ」をほぼフルバージョンで聴くことができます。父との別れ、母との確執、日本やヨーロッパで受けた差別、貧しい不遇時代、聴力の喪失……と、様々な困難に立ち向かいながら、純粋無垢に生き抜いた魂の音色。私たちはその音色にフジコの生きざまを感じるからこそ、彼女の演奏に感動するのではないでしょうか。 「その日その時の出会いを大切にして、こころからピアノを弾いていこうと思う」と自伝で語るフジコ・ヘミング(『フジ子・ヘミング 魂のピアニスト』)。いくつになっても、どんな苦境に立たされても、自分を信じ続ける――そんな希望と勇気がもらえる作品です。 <文/此花さくや> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 (C) 2018「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ
此花わか
映画ジャーナリスト、セクシュアリティ・ジャーナリスト、米ACS認定セックス・エデュケーター。手がけた取材にライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、エディ・レッドメイン、ギレルモ・デル・トロ監督、アン・リー監督など多数。セックス・ポジティブな社会を目指してニュースレター「此花わかのセックスと映画の話」を発信中。墨描きとしても活動中。twitter:@sakuya_kono
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『フジコ・ヘミングの時間』は6月16日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
配給・宣伝:日活
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