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泥酔中に離婚。アル中を克服し再婚した男性を待ち受けていた試練

人生に債務が残っている

「一昨年の秋くらいから、佐智江がうつ病を発症したんです。もともとストレスを溜めやすい性質で、アル中だった時期にも心療内科に通院していたと、その時はじめて知りました。きっかけは会社での人間関係です。情緒がかなり不安定になり、僕がいないと食事もまともに摂らなくなったので、退社を勧めました。今はデザイナー職とは無縁の派遣事務を10時~19時でやっています」  佐智江さんは、出会った頃とは別人のように変わってしまったという。 「家では基本的に涙ぐんでいますし、ささいなことに腹を立て、僕にいちゃもんをつけ、毎日のように当たってきます。『あなたと結婚したせいで私の人生が台無しだ』と言われた時には、洋子の20代を台無しにしたことを思い出して、つらくなりましたね。ただ、あまり反論せず、聞き役に徹するようにしています」  失敗した結婚とアル中を乗り越え、ようやく手にした幸せのはずなのに、人生とはなんとままならないものか。しかし竹田さんの表情はそこまで暗くない。「毎日おつらいですね……」と声をかけると、竹田さんは言った。 「もちろん大変ですし、毎日が戦いです。だけど、僕は佐智江に恩があります。佐智江は僕を救ってくれました。だから今は僕が佐智江を救わないと、なんていうか……僕の人生がフェアじゃないものになってしまう。それに、こんなことを言うのは不謹慎だと思いますが、洋子を不幸にした分の債務も、僕にはまだ残ってるんです債務も、僕にはまだ残ってるんです「過去の罪を償っているということですか?」と聞くと、そうじゃないんですと横に首を振った。 「永遠だと思っていた家族ですら、いとも簡単に壊れる。つまり永遠なんてない。だから人は、心が一時的に壊れてしまっても、その状態が永遠には続かないと思うんです」  竹田さんは、自分で自分に言い聞かせるように熱弁した。 「それに、壊れた状態で吐く言葉が“ほんとう”じゃないことは、アル中で壊れていた僕自身が一番よく知っています。今の佐智江は僕に罵詈雑言を浴びせてきますが、それは佐智江の“ほんとう”じゃない。泣き叫ぶ佐智江の薄皮一枚の奥に、“ほんとう”の彼女がいるんです。……すみません、気持ち悪いノロケですよね」   そんなことはないです、と言うしかなかった。竹田さんが2度目の結婚生活に疲れきってしまう前に佐智江さんの“ほんとう”が戻ってくることを、心から祈りたいと思う。 ※本連載が2019年11月に角川新書『ぼくたちの離婚』として書籍化!書籍にはウェブ版にないエピソードのほか、メンヘラ妻に苦しめれた男性2人の“地獄対談”も収録されています。男性13人の離婚のカタチから、2010年代の結婚が見えてくる――。 <文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。 【WEB】inadatoyoshi.com
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