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“家族が得意じゃない”から離婚した30代男性「なにげない幸せがわからない」

ぼくたちの離婚 Vol.3 家族が得意じゃない】

僕は“ささやかな日々の幸せ”とか“家族と一緒にいてなにげない時に幸せを噛みしめる”みたいな感覚が、わからないんです

ぼくたちの離婚 Vol.3 そう話す橋本亮太さん(仮名/39歳)は、長身で垢抜けた文化系メガネ男子。髪は黒々、腹の出っ張りは皆無で、タイトに着こなしたポロシャツがよく似合う。波乱万丈の人生を歩んだアラフォーにはとても見えないが、彼には9歳の息子とともに某県で暮らす別れた妻がいる。彼は毎月、安くない養育費を支払う身なのだ。

両親の不仲と寮生活


 東京の中堅出版社で文芸編集者として働いている橋本さんは、編集者らしく話しぶりは知的かつ論理的で明晰。表情豊かで気遣いもできる人という印象だ。こんな人が「ささやかな日々の幸せがわからない」と口走るのは、少々意外に思える。しかし順を追って彼の生い立ちを聞くと、納得がいく。

「実家は愛知県の片田舎です。僕は物心ついた時から、両親の関係に温かい愛情を感じることはありませんでしたね。父は名古屋に本社がある大手企業に勤める高給取りのサラリーマンでしたが、明らかに外に女がいたんです。

会社までの通勤時間は1時間ちょっとでしたが、あるとき父は名古屋市内にマンションを借りて一人暮らしをはじめました。家に帰るのは月に2、3回程度。その後、僕が大学生のときに退職して事業をはじめました」

 家族をかえりみず好き勝手に生き、自己実現にひた走る父。対照的に明らかに不幸な母の姿を、橋本さんは目の当たりにしていた。

不幸な母の姿「結婚当初から父からの愛がないことに気づいた母の生きがいは、僕と姉の子育てだけ。だから彼女は子育てが終わると、生きる軸がなくなってしまったんです。離婚しようにも、専業主婦が長かったので働いて自活することもできない。なんて不幸な人なんだろうと思いました

 橋本さんは、そんな両親を見てひとつの結論にたどりつく。

無理に結婚を続けても、いいことなんてひとつもない。ごまかしごまかし続けて年を取ってしまったら、取り返しがつかなくなる。母の姿を見て、つくづくそう思いました」

 「家族みんなで仲良く団らん」といった幼少期の経験を経ないまま、橋本さんは寮制の中高一貫校に入学する。その寮生活も大変だった。

「寮内の人間関係がとにかくつらかった。学校の教室だけならまだしも、四六時中一緒にいて同級生と交わりすぎてしまうと、他人の嫌な面がすごく見えてくるんですよ。仲良かった奴とちょっとしたことで突然仲悪くなったりとか。そういうのが自分だけでなく、寮内で常にモザイク状に発生していて、心の休まる暇がない。心底疲弊しました」

 橋本さんが6年間の寮生活で形成したのは「他者に対する諦念」だという。

他人と交わった気になっても、本当に交わることなんてできない。人は結局ひとりなんだなって。18歳の時点でそう仕上がってしまったんです」

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誤った責任感で結婚

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