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毒母は社会のプレッシャーが生む。『母という名の女』監督インタビュー

 カンヌ国際映画祭のある視点部門で審査員賞を受賞した、母娘の関係を見つめたミステリー『母という名の女』が公開中です。



 17歳で妊娠中のヴァレリアと、姉クララが住む家に、疎遠になっていた母アブリルが戻ってきますが、アブリルは母性ではなく、自らの欲望を増幅させていきます。ラストまで緊張感が持続する本作を撮ったミシェル・フランコ監督に話を聞きました。

ミシェル・フランコ監督

ミシェル・フランコ監督

失敗した女性に対して、今の社会はレッテルを貼る


――アブリルは恐ろしい母親ですが、まったく想像できないキャラクターではありませんでした。彼女のキャラクターはどこから生み出されたのでしょうか。

『母という名の女』より

『母という名の女』より

監督:今の社会は、いい母親であるというプレッシャーをものすごく押し付けていると思う。「良き母であれ、良質な仕事を持て、お金を稼いで家に収めよ、子供のためには常に近くにいろ、夫のためには官能的な存在であれ、家族のために美しく装え」。現代女性は、そのすべてを求められている。そのプレッシャーたるや、あまりにも大きすぎて、当然失敗も犯してしまう。ところが、失敗をした女性に対して、今の社会はレッテルを貼ってしまう。

社会がいかに女性にいろいろなものを押し付けているかを集約した結果として生み出されたのが、アブリルというキャラクター。そこには社会が、エイジング、自然に年を重ねていくことを許さないという部分も含まれている。

『母という名の女』より

『母という名の女』より

――原題は「アブリルの娘たち」です。日本の『母という名の女』というタイトルへの印象をお聞かせください。

監督:女性というのが、いかにいろいろなものでありうるのかを示唆する聡明なタイトルだと思う。女性というのが母であるべきだという社会の思い込みがまだまだ根強いけれど、別に女性が必ずしも母に向いているわけではないし、母になるものでもないし、母になるには努力も必要になってくる。いいタイトルだと思うよ。

17歳妊婦のヴァレリア役の女優は、本作が初の映画出演


『母という名の女』より

『母という名の女』より

――アブリルは良い母とはいえませんが、一方で娘のヴァレリアには、どんどん強い母親としての表情が出てきます。あの表情が生み出されたのは、監督の撮影の手法である順撮りが利いているのでしょうか。

監督:そうだね。ヴァレリアを演じたアナ・バレリア・ベセリルは、これが映画初出演だったんだよ。冒頭、セックスの声が聞こえてきて、終わったと思ったら、お腹の大きな状態のヴァレリアが真っ裸で出てくる。アナは、あのシーンが初めての撮影だったんだ(笑)。見事にやってくれたよ。

アナはすごく利発で才能もある。彼女と作業をしながら、最後どういう表情に持っていこうか見えてきたこともあった。逆にあの表情、彼女の変遷が上手くいかなかったら、映画として成り立っていなかったと思う。

『母という名の女』より

『母という名の女』より

――ヴァレリアとは対照的なもうひとりの娘、クララを置いた理由を教えてください。

監督:母親のアブリルのキャラクターのバックグラウンドに関して、映画では描いていないし、役者にも伝えていない。そもそも外国人であるという設定くらいしかないんだけど、クララは、アブリルのバックグラウンドを想像しようとしたときに、カギになるキャラクターだと思う。母親と過ごした時間がヴァレリアより長いクララは、ちょっとぽっちゃりしていて自尊心が低い。アブリルという人間を理解しようとしたときに、一番カギになるキャラクターがクララだね。

『母という名の女』より

『母という名の女』より


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型にはまった映画を作ってしまったら、もう映画は撮らない

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『母という名の女』は全国公開中
配給:彩プロ




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