映画『昼顔』に反響再び。不倫で結ばれた男女が、普通に暮らすのは難しい?
<亀山早苗の不倫時評――映画『昼顔』の巻>
上戸彩(32)・斎藤工(36)出演、2014年にドラマとして放映されていた『昼顔』。今週、続編である映画版が地上波で初放送されました(25日、フジテレビ)。SNS上で再び反響が巻き起こっている本作を、不倫事情について長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)
※この記事にはドラマ・映画のネタバレを含みます。
ダブル不倫がそれぞれの配偶者にバレ、互いの家族を巻き込んでの大騒動となった木下紗和(上戸彩)と北野裕一郎(斎藤工)。紗和は離婚、裕一郎は二度と紗和と会わないと一筆書かされて妻・乃里子(伊藤歩)とやり直す決意をする。
その3年後、再会からの物語が映画となった。海沿いの街でひとり暮らす紗和は、大学の非常勤講師となった北野が講演のため街に来ることを知る。北野は客席に紗和の姿を見つけ、顔中汗だらけになる。再会、そしてまた何かが始まる暗示だ。
不倫関係に終止符を打っても、このふたりのように再会してしまうことは珍しくない。北野はホタルの研究をするため紗和の住む町へ通い続け、一方で妻の乃里子に離婚を切り出す。そして晴れてふたりは一緒に暮らしはじめる。
紗和が就職したレストランのオーナー・杉崎は自身が妻に不倫をされて捨てられた身の上。それを明かさないまま、紗和と北野の秘密を探って周りに言いふらす。小さな街で「ダブル不倫をやらかして逃げてきたふたり」は、周囲の人たちの反感を買う。これだけ不倫が多くなっている今の時代にあっても、もし「そんなふたり」がいたら周りの反応はこういうものだろうと考えさせられる。「そっと受け止める温かさ」が今の時代にはないのだ。
さらにせっかく一緒に暮らしはじめた紗和と北野の間にも、すれ違いや誤解が生じるばかり。
「自分が裏切ったことがあるから、人を信用できないのよ」
紗和が北野に投げつけた言葉だ。確かに不倫から一緒になったふたりは、相手を信頼して平穏に暮らすのがむずかしいと言っている女性がいた。相手がまた他の人を好きになるのではないか、人の夫を奪った自分は幸せになれないはずだ。そんなふうに感じてしまうらしい。
だが、北野先生は揺るがない。ケガをして歩けなくなった妻・乃里子の引っ越しなどを手伝っていることを紗和には言えないために誤解が生じているのだが、どんなときも北野の愛はぶれない。
紗和は北野の妻・乃里子に会いに行く。そこで初めてケガをしている乃里子を北野が助けていることを知り、ふたりは初めてきちんと話をして紗和は乃里子に心から謝罪する。
「私はケガをして吹っ切れた」
乃里子はそう言い、ひとつだけお願いがあると言う。
「離婚しても裕一郎って呼んでいい? 同じ業界だしまた会うこともあると思うから」
それに紗和は落ち着いて、しかしきっぱり拒絶する。
「それだけは……ごめんなさい」
だが、このときのやりとりがその後の悲劇を生むことになる。
『昼顔』ドラマで描かれたふたりの恋
不倫で結ばれたふたりが、直面する大きな問題
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