洗顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム……。日本人が日頃使用するスキンケア用品の数は、欧米人と比較してとても多いと言われています。
「欧米人のスキンケアはとてもシンプルです。多くの人はファンデーションを使わずポイントメイクだけですので、おのずと使用するスキンケア用品の数も少なくなります。
洗顔は、ミルクタイプかオイルタイプのクレンジングで汚れやメイクを落とし、さっと拭き取るくらいですね」(出来尾氏)

比較して私たち日本人を振り返ると、かなり多くの人がW洗顔を行っています。
洗顔料の主成分は界面活性剤。界面活性剤は、角質細胞の中にある細胞間脂質まで溶かしてしまうので、細胞間にいる美肌菌も一緒に洗い流されてしまうというのです。
しっかりメイクをして、W洗顔でメイクを落とす。すると美肌菌が失われ、乾燥を引き起こす。それを補うために化粧水で保湿をして、さらに美肌菌を失う……。日本人の肌には、この負の連鎖が起こっているのです。
これまで当たり前だと思っていたスキンケアが、美肌菌にとっては好ましくないということがわかりました。では美肌菌を増やすのに大切なのは、どんなことなのでしょうか。
「肝心なのは、美肌菌を減らさない努力をすることです。美肌菌の数には個人差がありますが、多くて1平方センチあたりだいたい2万個くらい。以前、
女性タレント数名の顔の美肌菌を調べたところ、たった100個というケースも少なくありませんでした。濃いメイクをして過剰なスキンケアをする、という行為を短期的に繰り返すと、美肌菌はてきめんに減ってしまうことがわかりました」(出来尾氏)
たとえば
一度洗顔をするだけで、2万個の美肌菌が一気に1000個まで減少してしまいます。ただし、美肌菌は一度減っても、12時間サイクルで復活するそう。ということは、できるだけ長く美肌菌が多い時間をキープすればいいのです。
「
私がおすすめしたいのは、化粧水を一切使わないこと、そして洗顔料を使う回数を減らすことです。難しいと感じられるかもしれませんが、化粧水を使わない代わりにアルコール成分の少ない乳液を少量顔に伸ばす、洗顔料を使うのは夜お風呂に入る時だけにするなど、できることから始めてみてください」(出来尾氏)
次回はヨーグルトを使ったスペシャルケアなど、美肌菌を育てるスキンケア方法をじっくりご紹介したいと思います。
【出来尾 格(できお いたる) プロフィール】
1974年、広島県生まれ。慶應義塾大学医学部卒。博士(医学)、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。現在はミルディス皮フ科に勤務し、理化学研究所バイオリソースセンター客員研究員でもある。専門はアトピー性皮膚炎、にきび、皮膚微生物学。世界でも数少ない皮膚常在菌の研究者であり、「美肌菌」の命名者。NHK「あさイチ」「美と若さの新常識」などテレビ出演でも活躍中。
<文/波多野友子>