「どうか、水が溜まっていませんように」
祈る気持ちで待つこと15分程度……。診察室に戻ってきた二次診療病院の獣医師は画像を見せながら笑顔でこう告げました。

心タンポナーデを乗り越えたケフィ
「水は貯まっていませんでした。多少残っている水は前回の取りこぼしと思われます。心臓も悪くありませんから、何の制限もありません。
まったく普通通り生活してください。お出かけもしていただいてかまいません」
「ありがとうございます!!」と、私は深々と頭を下げました。生まれてこの方、ここまでだれかに感謝したことはありませんでした。
死の淵をさまよったわけですから、一命を取り留めることができたとしてもきっと療養生活になってしまうと思っていました。いろんなことが制限されて、もう今まで通りの生活を送れないと思っていました。ところが「何の制限もない」と言うのです。
私は小躍りして喜び、何度も何度もケフィを抱きしめました。これからもまた、一緒に歩いたり、美味しいものを食べたり、どこかへ出かけたりする「
変わらぬ幸せな時間」をケフィが約束してくれたのです。文字通り夢のような話でした。
念のため2週間後にもう一度検査の予約し、病院を後にしました。そして、なじみのペンションに電話。中止になった飛騨高山旅行の代わりに、ケフィが何度も行っている伊豆でお正月を過ごすことにしたのです。
<文/木附千晶>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
【木附千晶プロフィール】
臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。
少人数の「ペットロス」セミナーを開催しています(港区東麻布、カウンセリングルーム「IFF」相談室内)。次回は2018年10月13日(土曜日)13時~16時です。