癌は、遺伝的要因、偶発的要因、環境要因の3つで起こります。一部のがんを除いて、多くのがんの発生には偶発的要因が最も関わっています。がんの多くは、患者が何か過去に悪いことをしたから起こっているわけではなく、ヒトという生き物には長生きすると、この病気が潜在的に起こってしまうリスクがあるのです。間違った誤解から癌患者さんを責めたり、自分自身を責めたりしないでください。
遺伝的要因はごく一部の癌のみで関わります。環境要因では、タバコはとてつもない重大な原因であるのは間違いありませんが、その他の生活習慣から起こる癌の割合は一部であることを知る必要があります。割合が低いとはいえ、この環境要因で起こる癌は、現在では予防できる癌ですので、正しい情報を理解して予防することが必要です。
※1 Tomasetti C, Li L, Vogelstein B. Stem cell divisions, somatic mutations, cancer etiology, and cancer prevention. Science. 2017 355:1330.
※2 M. Inoue N. Sawada T. Matsuda M. Iwasaki S. Sasazuki T. Shimazu K. Shibuya S. Tsugane「Attributable causes of cancer in Japan in 2005-systematic assessment to estimate current burden of cancer attributable to known preventable risk factors in Japan」
<文/大須賀 覚>
【大須賀 覚】がん研究者。筑波大学医学専門学群卒業。医学博士。現在、米国エモリー大学ウィンシップ癌研究所に所属。かつては日本で脳腫瘍患者の手術・治療に従事。その後、基礎研究の面白さに魅了されて癌研究者に。過去にはノーベル賞受賞者が一同に会する「リンダウ・ノーベル賞受賞者会議」に、若手研究者の日本代表に選出されて参加。臨床と基礎研究の両面を知る背景を生かし、一般向けにがんを解説する活動も行っている。ブログ:http://satoru-blog.com/