「ちょうど秋口くらいでしたが、いつものように仕事から帰ってきたら、部屋の中がやけに殺風景なんです。あったはずのテレビやブルーレイレコーダー、電子レンジに大学の卒業旅行で買ったブルガリの腕時計も消えていました」
部屋のテーブルには下手くそな日本語で書かれた、《ショーコへ。突然ですがインドに帰ることになりました。テレビやレンジはもらっていきます。ありがとう》というラディからの書き置きが。すぐに連絡を取ろうとしましたが、電話もメールも繋がらなかったとか。
「彼が留学生仲間とシェアしていたアパートにも行きましたがもぬけのカラ。その後、彼の姿を見ることもなければ、連絡が来ることもありませんでした」
彼に持ち逃げされた被害総額は約50万円。警察にも相談したそうですが、「恋人だったんですよね? しかも、インド人で帰国されてしまっては対処のしようがない」と相手にしてもらえなかったそうです。
「通帳やクレジットカードには手を付けられませんでしたが、裏切られたショックはあまりに大きく、1年くらいは立ち直れなかったですね。
だって彼が消える前の晩、家でご飯を食べながら2人で温泉旅行に行く話をしていたんですよ。百歩ゆずって急に帰国するにしても私の私物を盗むってありえません。おかげででインドもカレーも大嫌いになりました」
カレーには何の罪もないと思いますが、それほどのトラウマになってしまったのも事実。1日も早く祥子さんの家の食卓にカレーが出ることを望む限りです。
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最低の“ヒモ・クズ男”選手権 vol.4―
<文/トシタカマサ イラスト/やましたともこ>