“見た瞬間のインパクト”がすさまじいご当地菓子とは?/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.29 岐阜県「飛騨高山」の「旅がらす」】
土産というのは「ここへ行ってきた」とアピるものである。時には「行ってないけど行ったことにする」証拠の役割も大きい。
しかしそれでも美味いに越したことはなく、実際美味い土産ものはたくさんある。
現に私の大好きな博多「とおりもん」は、例え相手が妻ではない謎の女性と旅行するアリバイ工作のために東京のアンテナショップで買われたものであろうと、関係なく美味い。
しかし、とおりもんのビジュアルはシンプルを極めたまんじゅうである。この見た目について盛り上がれと言われても「早く食おうぜ」としか言えない。
つまり、そうは言うても土産物なのだから、味のことは置いておいて、見た瞬間「おっ」となり「どこ行ってきたんですか?」「誰と行ってきたんですか?」「あれ奥さんじゃないですよね?」と盛り上がることができるのも、土産の本分ではなかろうか、ということだ。
今回のテーマ食材は、そんな「見た瞬間のインパクト」にステータスを全振りされた菓子、「飛騨高山」の「旅がらす」である。
飛騨高山と言えば、飛騨高山がある岐阜県より有名なのではないかというくらいの人気観光地である。
特に、日本の昔ながらの街並みや、江戸時代そのままの建物などが残っているため、外国人観光客に人気だという。
YOUは何しに日本へ?と訊(き)くとその理由は千差万別であり、「アメリカにも乙女ゲーはあんだけどこっちの男キャラは全員顔が濃くてマッチョだがら、日本の美青年がしこたま出るヤツを買いあさりに来た」という女狩人の方もいらっしゃるが、飛騨高山にくる人というのは前述のような「エキゾチックジャパン」を求めている場合が多い。
よって、土産物だって一目で「おっ日本に行ってきたんだね!」「誰と?」「あれユーのワイフじゃないよね?」となる方が良いのである。
その点「旅がらす」は、日本人でも「おっ!?」となる。
まず、普通の饅頭(まんじゅう)なら15個は入りそうな箱に対し「6個」しか入っていないというのが気になる。
だがそれもそのはずで、中には「人形」が入っているのだ。
正確には人形を模した菓子だが、菓子か人形かと言われると、人形な菓子である。
その人形型菓子は、全長がシルバニアファミリーの二倍近くある。
もなかで作られた人形型に、同じくもなかで作られた三度笠がかぶせられており、道中合羽(かっぱ)を模したマント状の紙がちゃんと紐(ひも)で結ばれている。
非常に手が込んでおり、見た瞬間のインパクトが抜群だ。これを渡して何も言わない奴とは一生話が弾まないだろう。
さらに三度笠は着脱可能であり、はずすと顔が出てくる。
この「顔」については意見が分かれており、キツネという人もいればタヌキと言う人もいる。つまり「微妙なツラ」が出てくるのだが、これもこの菓子の面白さの一つである。

外国人観光客に人気の岐阜県飛騨高山
飛騨高山「旅からす」は見た瞬間のインパクトが抜群
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