石川名物のまんじゅうを勝手に揚げてみた。どうなる?/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.28 石川県輪島市朝市通り「えがらまんじゅう」】
今回のテーマは石川県輪島市朝市通りの「えがらまんじゅう」だ。
えがらまんじゅうとは、餅でこし餡をつつみ、さらにくちなしで黄色く色をつけたもち米をまぶして蒸したまんじゅうである。
見た目が栗の「いが」に似ており、それがなまって「えがら」になったのが名前の由来だが、それだけでは弱いので「縁賀良まんじゅう」というこれ以上縁起を良くするのは無理な当て字も施(ほどこ)されている。
えがらまんじゅうの概要は大体以上だ。
石川県には江戸時代から「五色生菓子」という婚礼の際に五種類の生菓子を振る舞う風習があり、その5レンジャーの内の一つにこの「えがらまんじゅう」が入っていることから歴史は相当古いはずなのだが、歴史のある菓子にありがちな逸話などは調べた限りでは見つからず、「この俺が作りました」という誰がどこで最初作ったかというような話も見当たらなかった。
コラムを書く身としては、正直、自己主張が強すぎる食い物の方が書くことがあり、「この俺様が作った」と各社揉(も)めているぐらいがありがたいのである。
その点、このえがらまんじゅうはすでに「食ってみるしかない」という大ピンチなのだが、今から各社利権で揉めてくれとも言えないので、とりあえず食ってみることにした。
「えがらまんじゅう」は「朝生」という、現地の朝市で作りたてのものを食べるのが一番だそうだが、今回送られてきたのは冷凍品である。
これを蒸し器で蒸すか、湿らせてレンジで温めるか、それすらしゃらくさい場合は、電子ジャーの飯の上にぶち込んでおけばいい、とのことだ。
とにかく温めた状態で食べることが肝要なようなので、とりあえずレンジで温めて食べてみた。
これは美味い。
どの俺様が作ったとか、どこの殿様に献上されたとか、ルークがダースベイダーを倒す時に持っていたとか、そういう逸話のいらない美味さである。
おそらくあんこ自体の甘さは控えめなのだろうが、温めて食べることにより甘さが非常に際立っている。そして周囲にまぶされたもち米が、普通のまんじゅうにはない食感と食べごたえを生み出しており、香ばしささえ感じる。
私が食べたのは冷凍をレンジしたものなので、若干乾いてしまっているが、これの出来たてを食べたらさぞかし美味かろう。「朝生」が推奨されるのもわかる。

逸話などは見つからず
逸話のいらない美味さ
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