「本当はもっと汚い言葉で文句を言ってたと思います。15歳までアメリカに住んでいて、日常会話レベルなら問題なく話せるので。 　このときは別の店員さんが飛んできて、私が成人であることを証明してくれましたが、バカにされた感じで言われたのが悔しくて……」 　涙目でウルウルさせる彼女に店員の大男もマズいと思ったのか、態度を一変させて「ソ、ソーリー」と何度も謝罪。お詫びとして名物のフィッシュ＆チップスをタダでいただいたそうです。 「それからは居合わせた地元のオジさんたちは、『アイツ相手にお嬢ちゃんもやるなぁ』って話しかけられたり、肩をバシバシ叩かれたりして楽しい時間を過ごしましたけどね。 　ただ、私が文句を言った店員さんが店の用心棒で、昔は相当なワルだったと知ったときは酔いが一瞬で覚めました（苦笑）」 　しかし、美憂さんがこの翌日も同じパブを訪れたところ、例の大男の店員は彼女の姿に驚いた様子を見せていたとか。 「で、私に声をかけてきて『お嬢ちゃんはジュースでいいか？』って。『そんなわけないでしょ！ （黒ビールの）ギネスちょーだい！』ってツッコミ気味に注文したら、ツボに入ったのか大笑いしていましたけどね。 　店に行ったのはたった2回ですけど、『また来いよ！』と言ってくれたので、頑張って旅行費用を貯めてイギリスに行こうと思います」 　いろいろありましたが、旅にハプニングは付き物。なにより美優さんにとって忘れられない思い出になったようです。 ―シリーズ 酒の失敗エピソード vol.15― ＜文／トシタカマサ　イラスト／鈴木詩子＞