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「紙ナプキンの化学物質が子宮にたまる」のトンデモ科学にご注意を

 ドラッグストアの生理用品売り場を見ると、ほぼ紙ナプキン一強状態。日本製のそれはハンパなく良質で、海外のゴワゴワ系ナプキンを使うハメになった女性が、メイドインジャパンのパワーを股で実感した、なんて話もめずらしくありません。

布ナプキン

布ナプキン

 一方で、数が少ないながら存在するのが、布ナプキン派の女性です。デリケートゾーンがかぶれたり、かゆくなるような敏感肌の女性にとっては、布ナプキンのやさしい肌ざわりが大助かり。洗ってくり返し使えてゴミにならないため、環境にやさしいというイメージもあります。

『呪われ女子に、なっていませんか?』 しかし、今冬『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)をリリースした著者の山田ノジルによると、「紙ナプキンを使うと子宮が汚染されるから、布ナプキンが安全!」と謳って使用を強力にプッシュしてくる人たちがいるといいます。“汚染”とは穏やかではありません。果たして、それは事実なのでしょうか……?

※以下、『呪われ女子に、なっていませんか?』より一部を抜粋し、著者の許可のもと再構成したものです。

「経皮毒」というトンデモ科学


 生理用品には種類があるので、ライフスタイルや使用感の好みで選ぶのが、一般的なセレクト基準です。ところが一部の女性たちは「生理用ナプキンの素材で女性の健康が左右される」というデマに不安を覚えることで、選択が限定されていく。これが、困りものなんです。

 都内の某布ナプキン専門店へ立ち寄ったときのお話をしましょう。所せましと並ぶ布ナプキンの量に圧倒されていると、商品説明をしてくれていた店員が、こんなトークを始めたのです。

「性器の粘膜は、体のどこよりも吸い上げる力が強いんです」
「紙ナプキンを使うと子宮に化学物質がたまるので、それを洗い流そうと経血の量が増えるんですよ」


 やさしく可愛らしい雰囲気の店内で、サラリと紙ナプキンユーザーを脅し、布ナプを推すギャップに、一瞬フリーズ。ここで「やだ、紙ナプキンってなんか怖~い!」と素直に受け止める人は、果たして日本で何パーセントいるでしょうか。

紙ナプキン 多くの人は「紙ナプキンの成分がどうやって皮膚から入って、子宮にたまるの?」という仕組みに首をかしげそうですが、自然派ビジネスを手がける人たちのあいだでは経皮毒という思想を媒介にして広まっている定説です。

 経皮毒とは、日常で使っているものに含まれる有害物質が皮膚から体内に吸収されることをいい、一見学術用語のように見えますが、実はただの造語です。

 科学的根拠がないにもかかわらず、この説を推す医師や専門家が断言を絶妙に避けつつ子宮内膜症との関係を語ることもあり、絶対あり得ない! とは言えないような気がしてくるというトラップが仕掛けられています。

 言われてみれば、確かに湿布薬は皮膚から有効成分を吸収させているので、同じく化学物質を吸収させることもまた可能。しかし雑貨であるナプキンから化学物質が吸収されるというのは飛躍しすぎですし、莫大な研究費を投じて商品開発されている大手生理用品メーカーへの信頼が揺らぐほどのものではないでしょう。

化学物質への漠然とした不安を利用


“紙ナプキンの化学物質が子宮にたまる”という「さすがに無理でしょ~」的な話を一部の人が信じてしまうのは、化学物質への漠然とした不安が根底にあるからです。「ケミカルがなんとなく怖くて苦手」だったのが、脅し文句にあおられて「危険」という文脈にスライドされていくのは、容易に想像のつく展開。

 そうやって着々と紙ナプヘイトの土壌が醸されていき、一部布ナプユーザーのあいだで「紙ナプキンは石油由来の材料から作られているので、その化学物質が膣の粘膜から吸収され、子宮に蓄積されて病気の原因になる」→「だから安全な自然素材の布ナプを使おうね」という話が、定着しました。

 ところで“粘膜”というならナプキンがあたる部分には肛門もあると思うのですが「直腸から化学物質が吸収されて大腸がんになる」「便秘の原因!」という話が出てこないのは、なぜなんでしょう。腸だって粘膜なのですが。

 その理由は経皮毒のお説に「女性は子宮に毒がたまりやすい」という主張があることと(ちなみに男性は肝臓や前立腺だそうで)、生理や妊娠といった本能的な部分を脅すことで、女性の感情に訴えかける仕組みをつくっているのかもしれません。

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ケミカル嫌悪は「ピル」にも及ぶ

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