「夫は自分の身内がやっている会社の役員。私は20代で起業して社員数人を抱えてがんばっていた。『がんばっている女性が好き』と熱烈にプロポーズされて結婚したものの、
夫は家の中のことはまったくできない。子どもを3人育てているときは本当に大変でした。
会社を自宅近くに移転させたくらいです」

マサコさん(53歳)はそう話す。過保護な母親に育てられた
夫はおっとりした“いい人”なのだが、自分の身の回りのことさえおぼつかないから、万が一自分が倒れたらどうするのかと不安でならなかったという。
そして案の定、7年前、彼女は命に関わるような大病を宣告された。そのとき、双子の長男と次男が13歳、そして長女は8歳だった。まだまだ手がかかる年齢だ。
「検査が続いていたころ、私はある程度、大病であることを覚悟していたので、家族を集めて家事講習会を連日おこないました。特に
夫には料理を特訓。最初は『食べるものなんて買ってくればいい』『店屋物でいい』と言っていましたが、育ち盛りの子どもたちのことを考えて作ってほしい、お弁当だって必要だし、食は基本なんだからと必死で説得したんです。
そこに至って、
夫はようやく家事や子育てについて本気で考えるようになったみたい。最初の入院は3週間だったんですが、私が退院したときは
夫と子どもたちで一通り、家事ができるようになっていました。やればできるんですよ、誰だって」
男だからやらなくていいわけではない。そのことが、彼女の大病と引き替えにようやく夫にわかってもらうきっかけになったのだ。むしろ、そこまでにならなければ、彼女はずっとひとりでがんばり続けるしかなかったともいえる。
夫婦がどうやってお互いの生き方を尊重しながら家庭を運営していくのか、子どもにいい影響を与えていこうと努力できるのか。もちろん、かっこいいところばかり見せればいいとも限らない。共働きの両親がふたりとも疲れきって、「たまにはピザでもとろう」ということがあってもいいだろうし、子どもに料理を作ってもらってもいい。
大事なのは、
夫婦が互いを「下に見ない」こと。たとえケンカをしても
目線が対等であることではないだろうか。
<文/亀山早苗>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】