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妊娠テロ、一徹…“女子性欲事典”の意外とマジメな内容

「キスフレ」「婚外恋愛」「セカンドバージン」「妊娠テロ」……こんな言葉、聞いたことありますか?

セックスペディア 平成女子性欲事典』(文藝春秋)は、性にまつわる単語を解説する本。といっても官能用語集というわけではなく、単語から昨今の性のトレンドを読みとく内容になっています。著者は三浦ゆえ+平成女子性欲研究会。

「自慰」の最新の呼び方は「セルフプレジャー」



 単語は全部で59個。ちまたには性に関する単語は大量にあふれていますが、本書は6つのカテゴリがなるべく均等になるようにピックアップされています。カテゴリと掲載されている単語を一部紹介しましょう。

『BODY:女性の身体や健康に関する情報を知りたい』……「クーパー靭帯」「PMDD」など

『ISSUE:性に関する社会問題を知りたい』……「マタハラ」「リベンジポルノ」など

『NEW WORD:最近の流行語の意味を知りたい』……「キスフレ」「妊娠テロ」など

『PLEASURE:性を愉しむための情報を知りたい』……「一徹」「レンタル彼氏」など

『TREND:性のトレンドを知りたい!』……「婚外恋愛」「喪女」など

『TROUBLE:性のお悩みを解決したい』……「ED」「膣内射精障害」など

 単語のセレクトは男性向けよりも女性向け寄り。中の解説も主に女性に向けて丁寧に書かれています。

 たとえば「セルフプレジャー」。女性誌のセックス特集では頻出の、主に女性のマスターベーション(オナニー、自慰)を指す単語です。女性が1ヶ月でする平均回数は「0.9回」(20代は2.2回、30代で1.1回)。

 同年代の男性の回数(20代11.1回、30代9回)と比較したうえで、「身体の構造や性欲の感じ方が異なるので一概に比べられるものではありませんが、女性もこのペースで楽しんでもいいのでは?」と提案。

「ビッチ」はすがすがしい?



 特徴的なのが、男性に対する批判意識がところどころ見られるところ。

妊娠テロ」の項(わざと妊娠し結婚を迫る行為)では、「そうまでして結婚に必死になる女性を、男性が見下しているのは明らかですが、これってバカなのは本当に女性だけなのでしょうか? (中略)安全日というのを鵜呑みにして、ナマでしてしまう男性だって愚かです」。

TENGA」(男性向けオナホール)の項では「『ホンモノより気持ちいい!』などという男性には、キツいお灸を据えてあげましょう」。

 最近の女性誌・女性向け書籍のセックス特集の流行は、「彼氏のためのセックス」から「自分のためのセックス」に変化しつつあります。そのためか、本書の中には「彼氏を気持ちよくさせてあげよう!」といった言葉は皆無。男性を批判する文言も、日頃男性に対してモヤモヤを抱えている女性にとっては溜飲が下がるものになっています。

 ただし、その方針が逆に女性に甘すぎる記述になっている部分も。

 たとえば「ビッチ」。本書は「ヤリマンは男性にとって都合がいいだけの存在」「痴女は男性の願望が生み出したファンタジー」とした上で「ビッチは自らセックスのチャンスをつかみにいくアグレッシブな女性像。快感に貪欲ゆえ、世間の貞操観念に縛られず、自ら行動していくすがすがしさがあります」とします。

 確かに「ビッチ」は最近ポジティブな意味も生まれ始めてきた単語。それでも依然としてネガティブな意味のほうが優勢。あまりポジティブさを前面に出しすぎるのは、かえって性のトレンドを正確に描けていないように思います。

 最も気になるのは、この本の読者は誰なのかということ。

 表紙の折り返しには「こんな人におすすめです!」として「女性が性を愉しむための情報がほしい」「性や身体に関するお悩みを解決したい」「最新の性トレンドを知りたい」「性に関する社会問題を知りたい」とあります。

 ただ、セックスを楽しみたい人にとってはややまじめな内容ですし、悩みを抱えている人にとっては他の情報が不必要と感じたり、タイトルの「セックス」「性欲」という文言に抵抗をおぼえてレジに運びづらい……といった事態も考えられます。もちろん、部分的にしか関心がない読者が、興味のある項を読むうちに、さまざまな知識(性病や性トラブルにまつわるものなど)を自然にゲットできるという面はあるのですが。

 本書は、漠然とした性への興味・関心を満たし、なおかつ正しい性教育を受けるには適した一冊。中高の保健室に置いてもらって、中高生がわーきゃー興奮しながら読んでいくのが一番効果のある読み方かもしれません。

<TEXT/青柳美帆子>




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