「彼女ならいいよ」と夫に伝えたら、とんでもない反応が
「それからずっとカナちゃんは、母ひとり子ひとりでがんばってきたらしい。そういう状態なら、彼女が夫と不倫をしてもいいんじゃないか、
ふたりが結婚したいなら、それも考えてもいいと思うようになっていったんです」
夫にその話をすると、夫の顔色が変わった。
「
アオイは僕なんかもういらないのか」
いらないわけではない。彼女に惹かれたのはあなたでしょとアオイさんは言い返した。
「カナちゃんには悪いけど、一生一緒に暮らす相手ではないと夫が言ったんですよ。それならああいう女性に手を出すなと私は夫をグーで殴ってしまいました。今思えば、夫の優しさがカナちゃんに向いただけなんでしょうけど、
責任をもてないなら最初から関係を持つなと言いたかった」
半年ほど夫と話し合った。カナさんと3人で会ったこともある。ただ、最後にはカナさんが言った。
「
私は母親を抱えて結婚はできない。もとはといえば悪いのは私」
それから1年、アオイさんとカナさんの友情は続いている。最初は逃げていた夫も、今では家にカナさんが来ることを歓迎するようになった。
「夫とカナちゃんが男と女の関係だったんだなと思うと、たまに複雑な気分にはなります。でも、それ以上に私はカナちゃんとのつきあいを切りたくない。夫にはたまにチクチク言ってますけどね」
アオイさんは口角を上げてニコッと笑った。大人の女性らしい、何もかも呑み込んだような表情だった。
<文/亀山早苗>
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