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男性社会で生きたふたりの女性の物語、成功に結婚は足手まといか?

「私たちはOLじゃなくて、サラリーマンだからね」。筆者が20代前半の会社員だった頃、女性上司にこう言われたことを思い出した映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(3月15日公開)。  16世紀、ヨーロッパ屈指の知性と美貌の持ち主だったふたりの女王、イングランド女王のエリザベスI世とスコットランド女王のメアリー・スチュアートを描いた物語です。  従姉妹同士でありながら、イングランドの王位継承権を巡り、不本意ながらも敵対せざるを得なかったふたり。男性優位社会でなんとか生き延びようとした彼女たちが歩んだ正反対の人生から、現代の女性がなにを学べるのか――。今回はふたりの対照的な生き方を紐解いていきたいと思います。

結婚を捨てた女王エリザベスI世

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』より

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』より

 生涯独身を貫き通し“処女王”と呼ばれたエリザベスI世(マーゴット・ロビー)。  25才の彼女がイングランド女王に即位して開かれた最初の議会では、議員たちがエリザベスに「女王はこの国のキリスト教会の首長になれない」から一刻も早く結婚すべきだと迫ります。そのとき、彼女はこう言い放ちました。「私が息をひきとったら、大理石の墓に『処女として生き、処女として亡くなったエリザベスがここに永眠する』と刻んでください」。(※1) “私はイングランドと結婚した”と主張する彼女は、ロバート・ダドリー(ジョー・アルウィン)という恋人がおり、劇中、ロバートとエリザベスの切ない恋愛が展開しますが、そもそもロバートは既婚者の上に身分も低く、ふたりの結婚は望むべくもありません。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』より

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』より

 ヨーロッパ中の王室からエリザベスに結婚の申し込みが来ましたが、外国の王子と結婚しようが、イングランド貴族と結婚しようが、夫がイングランドの国政に口を出すことになることは、5ヶ国語を流暢にあやつるほど頭脳明晰な彼女には明白。つまり、エリザベスは男よりもキャリアを優先したのです。  その結果、フランスとの戦争で大敗し悲惨な状態だったイングランドを改革することに成功し、イングランドは世界の7つの海を制覇する大国へと成長しました。(※2)

権力を巡り対立するふたりの女王

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』より

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』より

 庶子だったことからイングランドの王位継承権を長年手に入れられなかったエリザベスとは異なり、生まれながらにスコットランド女王になったメアリー(シアーシャ・ローナン)は、16歳でフランスの王妃に。  そして、イングランド王位継承権をもつメアリーをイングランド女王に据えたいフランス王の命令に従い、メアリーはあらゆる公文書にイングランドの統治者と自称しました。(※3)このときから、エリザベスとメアリーの対立が始まったのです。  ところが、メアリーが18歳のときに夫が死去。彼女はスコットランドに帰国し王位に戻りますが、エリザベスにとってメアリーの存在そのものが脅威であることに変わりはありませんでした。
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恋に生きた女王メアリー
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2019年3月15日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー 配給:ビターズ・エンド
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