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発達障害の少女がノーベル平和賞候補に。“普通じゃない”という才能

感じたことを信じるという才能

 そんな折、アスペルガーのトゥーンベリさんが声を上げたことに、意味がありそうな気がしてきます。本書には、市民的不服従を貫いたアメリカの詩人、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817-1862)のエピソードも登場します。ある研究によると、ソローもまた、頑固で簡単には他人に従わない自閉症的な傾向があったのだそう。
ソロー

ソローの切手

<ソローのように、歴史上でも有名な非定型インテリジェンスの持ち主たちは、「世間の当たり前」ではなく、自分自身が心の底から感じられることを信じ、粘り強く実行したからこそ、歴史に名を残す天才と言われるようになった。>(p.274)  お仕着せの、借り物の言葉が取り決めた最大公約数的な常識に従うのではなく、自らの感性を吟味して導き出した真実を指針として生きる人たち。まさに、ソローとトゥーンベリさんに共通する点です。そして著者は、そんな存在が新たな時代を切り開いていくのではないかと考えているのですね。  そのためにも、自閉症を“障害”とみなす前提そのものを変えていかなければならない。『自閉症という知性』というタイトルに込められたメッセージと思います。 <文/石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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