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子育てをめぐって離婚寸前の夫婦が、劇的に再生した“勇気ある決断”とは

 何らかの事情で一度関係の壊れかけた夫婦でも、思わぬきっかけで再生することがあります。男女関係や不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが、夫婦の“再生物語”をレポートします。(以下、亀山さんの寄稿)  夫のことは嫌いではないが、一緒に暮らしていくのは何ともうっとうしい。ナツミさん(36歳)は、結婚してすぐそう思うようになっていた。
結婚

写真はイメージです(以下同)

 同い年の夫と結婚したのは31歳のとき。つきあって半年で妊娠が発覚、そのまま婚姻届を出した。やさしい人だし、これも縁だと思って結婚したものの、実際に生活してみるとことごとく価値観が合わない。出産後は思い通りにならない育児と、心配性でやたらと「保護」しようとする夫にうんざり。「めんどうくさい」とすべてを放り出したくなったという。

「きみと子どものことが心配でたまらない」

 ナツミさんの夫は、一般的には「いい夫」だと思われる面が多々ある。妻とは何でも話し合い、妻の心身を心配し、子どものことには細部まで目配りをする。ただ、彼女にとっては、自分が追いつめられているように感じたのだという。 「婚姻届を出したのは妊娠4ヶ月のとき。夫は私を労(ねぎら)って、何もかも自分でやろうとする。でも私は仕事を続けていたし、ときには残業だってします。金融関係は繁忙期は本当に忙しくて。すると夫は『妊婦を残業させるなんて、きみの会社はひどいよ。オレが抗議する』なんて言い出す。私の体調が悪いわけでもないのに。夫を止めるのに一苦労でした。  一時期、切迫早産の危険もあったのですが、あくまでも危険性があると言われただけなのに勝手に入院を決めてしまったり。結局、入院はしないですんだのですが。なんでも勝手に決めないでというと、『オレはきみと子どものことが心配でたまらない』と。善意でしているから、あまり感情的に怒れないんですよね。それがつらかった」 仕事 まるで過干渉の父親と同居しているかのような生活だったとナツミさんは苦笑する。子どもが産まれて半年後、保育園に入れることになったので早速、会社に復帰しようとしたら夫は大反対。子どもは3歳までは親が育てるものだと「3歳児神話」を強烈にぶつけてきた。 「このときばかりは私も反論しました。私は社会復帰したいし、子どもとふたりきりで家にいたらストレスまみれになってしまう。そんなに手元で育てたいなら、あなたが会社をやめればいいでしょ、と」  すると夫は実家から母親を呼びつけようとした。同居して子どものめんどうを見てもらう、と。姑との同居にはさすがに怯(ひる)んだナツミさんだが、姑のほうが一枚上手で、息子からの同居の打診を断ってくれた。

夫の反対を押し切り仕事復帰したものの

 ナツミさんは自分の妹やいとこに頼み、育児を手伝ってもらいながら仕事に復帰。夫は「きみと子どもの幸せのためにも反対だ」と言いながらも渋々、受け入れざるを得なかったようだ。 「仕事に復帰してみて初めて、私は本当に仕事が好きなんだなと思ったんです。部署も変わって、私なりのアイデアや企画が受け入れられるようにもなり、もっともっと仕事がしたくなった。もちろん子どもはかわいいけど、別次元で仕事も大切だった」  しかし、夫には「母親の責任を果たしていない」と責められた職場に来た夫「僕は定時で帰れるよう努力しているのに、きみは仕事に逃げていると言われて。私はそんなつもりはなかったし、保育園とのやりとりも密にしていました。夫は夕方、私を会社に迎えに来たこともあるんです。本当に残業かどうか確認しに来たみたい。子どものために時間を削られるのはいいけど、夫の過干渉と過保護はそのまま束縛にもなるわけで、もううんざりでした」  自ら仕事をしながらひとりで暮らしている母親に相談すると、「仕事は辞められないからずっとめんどうは見られないけど帰ってきてもいいよ」という返事。ナツミさんは、離婚して子連れで母親と暮らすのも悪くないかもと思い始めた。 「夫は何かを察知したのか、話し合おうと言い出して。私はもうかなり離婚に気持ちが傾いていたので、素っ気なく『なに?』と聞いたら、夫が『会社をしばらく休もうと思う』って。どうしたのかと思ったら、会社に育児休暇を2年申請してみた、と言うんです」
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「家庭のことはオレがやるから、きみは仕事に没頭して」
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