遺産相続で争う身内にため息…もめる前に何をしておけばいい?
<お金の人生相談/ファイナンシャルプランナー・花輪陽子>
●まだ30代ではありますが、若いうちに、遺言状とまではいかないにしても、しておくべきマネー終活ってありますか?(37歳女性・会社員)
「最近、祖父母が相次いで亡くなりました。その際、両親と叔母夫婦で祖父のありもしない遺産の件でもめているのを見て、もしものことがあったとき、お金のことで家族に迷惑をかけたくないなと心底思いました。
人生100年時代と言われていますし、まだ先の話だとは思いますが、今から心がけておくといいこと、知っておいた方がいいこと、長いスパンで準備しておいた方がいいことなどがあれば知りたいです」
ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。遺産相続でもめるのは世界共通のようです。私が住んでいるシンガポールでは贈与税・相続税はありませんが、それでも相続事業承継でもめるようです。そのために遺言状を作るのが一つのブームとなっています。
日本では贈与税・相続税の最高税率は55%と、非常に高く、さらに問題を複雑にさせます。さらに、2015年から相続税の基礎控除(税金がかからない範囲)が引き下げられ、相続税を支払うことになる人の割合は、約12人に1人となりました(※2016年の場合)。基礎控除の引き下げ前と比較して相続税を負担する人の割合は倍増し、普通の会社員などでも相続税対策を考えなければならない時代になっているのです。
2015年以降、相続税の基礎控除は、以下の計算式で算出することになっています。
「3000万円+600万円×法定相続人の数」
相続人が一人の場合、基礎控除は3600万円ということになります。例えば、相続する財産(現金・預金・有価証券・生命保険・不動産・貴金属など)が3600万円以上あり、相続するのが子ども一人という場合、その子どもは相続税と無縁ではなくなるわけです。
地価の高い都心にマイホームを持っている場合、評価額が1億円を超える場合もあります。その時点で相続税の対象となってしまいますが、自宅の場合は、一定の基準(※)を満たすと限度面積の330平米(100坪)まで、評価額を80%減額してもらえる特例(小規模宅地等の特例)があります。
※<①配偶者が相続する、②同居していた人が相続する、③3年間借家住まいをしていた相続人が取得する>場合は、特例の対象になる。
なお、都心にマイホームがあって、金融資産もあるような場合、上記の特例にあてはまらなければ相続人が高額な相続税を課される可能性が高いでしょう。
相続が発生しそうで心配な方は、早めに対策を練っている家庭も多いです。以下のような方法が考えられます。
・「生前贈与(暦年課税による贈与)」で相続財産を減らす
・不動産を活用して財産の評価額を下げる
・生命保険を活用する
対策が必要な人は相続に強い税理士などのプロに相談してみるのも一つの手です。さらに、もめている場合や、もめそうな場合は弁護士に相談をする必要がありそうです。遺言書の作成は司法書士や行政書士にも依頼することができます。
まずは財産を整理してリストアップしておき、相続税の対象になるのか、その場合は対策を考え始めるのがよさそうですね。相続税の対象にならない場合も、もめることはあるので早めに専門家に相談をするのも手ですよ。
<文/花輪陽子>
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相談:若いうちにしておくべき、マネー終活ってある?
回答:普通の会社員でも相続税対策を考える時代に
あなたのマイホームはどう?

早い段階から、リストアップを
花輪陽子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFP(R)認定者。1978年生まれ、外資系投資銀行をへてFPとして独立。現在シンガポール在住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』 (講談社+α新書)など著書多数。公式サイト