働くママが多くなってきたことは、それだけ夫婦共働きが一般的になって来た証拠です。しかし、いまだに昔の感覚が根強いのも事実で、会社や地域によっては「女性が働くこと」に壁があり、待機児童が問題になるなど、
苦労しながら働いているママさんは多いです。
当時の働く女性に対する理不尽さに直面し脱落した茜さん。一方で、なつは周囲の理解ある人々を巻き込んですんなり問題解決しました。
茜さんが脱落した件は、主人公が悩むきっかけになった重要なエピソードですが、「なつばっかりズルい」という感想が数多く出ています。また、夫である坂場は自ら進んで積極的になつに協力し、育児に励みますが、それさえも「ワンオペ育児」「才能ある夫を専業主夫にさせる神経が図太い」と評されています。

写真はイメージです
批判があるのは、なつが当時の風潮に逆らってまでも働き続けるほどの価値があるアニメーターであることや、働く女性の道を拓く揺るぎない精神が深く描かれていないからという、描き方の問題でもあるでしょう。
それと共に、なつが話の中で戦っていたマタハラや待機児童問題などが
“現在でも解決されていない重要な課題”だという点もあるのではないでしょうか。
様々なハラスメントと戦いながら、日々仕事に向き合い、闘っている働く女性たち……問題が現在進行形であるからこそ、働くママの壁を簡単に解決する主人公と自らを重ね合わせることができず、「エコひいきされている」「ご都合展開」などという批判が多くなってしまうのだと思います。
坂場のように男性がちゃんと育児をし、なつが作画監督に抜擢されたように会社も正当に女性の能力を認め、困っていた時に茜が現れたように子供の預け先も簡単に見つかる……今の日本がそんな『なつぞら』のような世界ならば、もしかしたら批判は少なかったのかもしれませんね。
<文/小政りょう>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦