フランスが誇る名女優に演技指導した若い映画監督がいた!?
――60本以上もの映画に出演されてきたビノシュさんですが、いままでうるさい監督っていました?(笑)

『真実』より
ビノシュ「自分の作品のアイデンティティを確立していない若い映画監督のなかには、ワンテイクが終わった瞬間に私のところへ飛んできて演技指導をしてくれた人もいましたよ(笑)」
――世界三大映画祭の女優賞をすべて制したビノシュさんに…!? (笑)
ビノシュ「そういうときは、『まずは3テイクを私流にやらせてみて。その後に必要なら演技指導をして下さい』とお願いするようにしていますね。やはり、役者は演じる自由があったほうがクリエイティビティを生かせると思います」
――是枝監督も、以前ビノシュさんの主演作『Vision』(2018)を監督した河瀬直美氏も、ビノシュさんは非常に集中力が高くストイックに演技に打ち込むと語っていました。
ビノシュ「今回の『真実』では通訳さんがいても、是枝監督が何を言わんとしているのか理解するためにとにかく集中して彼の言葉に耳を傾けました。
それに、現実とは違う映画の別世界に入り込むには自分自身の知識や意思を一旦忘れてニュートラルな状態にして、役に下りていくのが私のやり方なんです。
役者って風船みたいなもの。風船がパンパンな状態だとそれ以上何も入りませんよね? でも何も入っていないと、破裂寸前まで膨らませることができる。それにはかなりの集中力が必要。だから私はどうしてもストイックにならざるを得ないんです(笑)」
<文/此花わか>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):
@sakuya_kono