地元の名士と離婚して東京で成功したのに「田舎に帰れば死んだ人扱い」
水商売で成功する女性の中には、やむにやまれず夜の世界に飛び込んだという人が少なくありません。藤子ママもその一人。東京に30歳で上京し、キャバレー、クラブ、そしてママと順当にステップアップし、今ではオーナーママとして2店舗を切り盛りする成功者です。
しかし、そんな成功者の藤子ママも、地元に帰ると嫌~な思いをするのだとか。
藤子ママがそもそも地元を飛び出し東京で頑張ろうと思ったのは、離婚がきっかけでした。地元の権力者の家に嫁いだものの、上手くいかずに10年で離婚。当時、地元では離婚がまだ珍しかったため、周囲の目を気にして東京に向かい、夜の世界へ飛び込みました。
「地元に帰ることはほとんどありませんでした。とはいえ用事はたまにあるので、その時はササッと戻って誰とも交流せずにすぐに東京にトンボ返りするようにしていました。誰かに会うと根堀葉掘り聞かれるだろうし、大体の人が夫側の知り合い。会って話すのが面倒なんです」
上京当時は子どもも10歳と小さかったため、夜の仕事との両立は大変です。しかし、なんとかして自分と子どもの居場所を作らなくてはいけない。そう思った藤子ママは仕事に邁進し、お店を持ち、ママとしての立場を確固たるものにしていきました。
そうして今では子どもも成人し、自分も2店舗のママとなりました。地元に帰るという選択肢はないものの、ある時「もう逃げるような姿勢じゃなくてもいいかな」と思い、誘われた地元の飲み会に顔を出してみたそうです。
すると彼女はとんでもない事を言われるハメに…。
出席していたのは中学や高校の同級生ら。彼女にとっては30年以上ぶりなので、会った直後はお互いびっくりしたりはしゃいだりと懐かしさに溢れました。
「でも嬉しいのは最初だけ。ある子が『死んだって聞いたんだけど!』って言い出して、それから周りも『私も私も』と、口々に私の噂を口にしだすではありませんか」
なんと藤子さんは地元では「ガンになった」「東京でソープに沈んだ」「そもそも死んだ」「ヤクザの女になって薬漬けになった」などなど、さんざんな噂が流されていました。
「一体誰がそんな話を…と思い聞くと、どうも旦那一族と仲の良い人が言いふらしていることがわかりました。つまりやっかみと、地元を逃げるように出ると怖いことが起きるといういましめです。これにはさすがに呆れましたね」
藤子さんは呆れたと当時にそんな噂を信じる周りの人たちが馬鹿みたいに思えました。
そこで「今は銀座で高級クラブを経営し(正しくは銀座ではないし、普通のクラブ)、タワーマンションに住んで娘は国立大学に通っています」と、ウソを並べて派手な生活ブリを吹聴します。
「死んだ人ってウソの噂にはウソで跳ね返しちゃおうと思って(笑)。適当に華々しくみえるようなウソを並べて周りの人に言っておきました。でもそれ以来地元の人とは交流したいとも思わないし、やっぱり閉塞的な空気感って怖いですね」
そう話す藤子ママ。田舎は偏見も多いものですが、出ていく人をこのようにこき下ろす習慣があるとは、なかなか恐ろしい空気の違いがあるものです。
―シリーズ「地方の闇/都会の闇」―
<文/しおえり真生 イラスト/カツオ>
地元を捨てる思いで飛び出した30歳の頃
「死んだと思ってた!」地元で騒がれる彼女の噂

目には目を。嘘には嘘を
