胃弱の改善に運動や食生活の改善が大切なことが分かったところで、次は食生活の改善にフォーカス。そこで、村田先生のお話の中にもでてきた「漢方や薬膳」のプロである薬剤師の山口りりこさんに話を聞きました。少々ハードルが高そうなイメージがある漢方・薬膳ですが、
「漢方も薬膳も、体にいい野菜を食べることくらい気楽に捉えてほしい」と言います。

写真はイメージです
「まず、東洋医学で
『胃弱』は、ストレスやお酒などの刺激物によって胃に熱がこもる『胃熱』が原因の一つだと言われています。外食の増える年末年始は、胃の熱をとる鎮静効果のある食材をとることをすすめています」(山口さん、以下同)
具体的に、
漢方の観点から胃の熱をとるためのオススメの食材を聞いてみると、「ヨーグルト・豆腐・豆乳・貝類・大根」とすぐ手に入りそうなものばかり。「さらに言うなら、ヨーグルトは無糖で酸っぱいものが好ましいです。酸っぱさが気になるようでしたら、はちみつを入れればいいので」とのこと。
普段の食事をいきなり変えることが難しければ、ハンバーグを食べるときはおろしハンバーグにするなど、普段食べているものに、前述の食材を足すだけでも効果はあるのだとか。これなら、ストレスにはならなさそうです。
冬に注目、“発酵×漢方”で胃に優しくおいしい「薬膳胃弱鍋」とは
山口さんご自身が漢方に魅了されたことからプロデュースした、「薬膳レストランKampo’s (カンポーズ、東京都港区)」では
「薬膳鍋」が人気なのだとか。この冬は「薬膳胃弱鍋」も登場しています(2020年2月末まで)。

「ダブル発酵2色スープの『薬膳胃弱鍋』~ピリ辛味噌と魚介出汁~」
「冬は気を貯める場所である『腎(泌尿・生殖器系など生命エネルギーに影響する器官)』が弱りやすい時だと、漢方では考えられています。そこで冬限定の『薬膳胃弱鍋』は、健康志向の高まりから大人気の発酵食品を入れた『発酵鍋』と『漢方』を組み合わせました。
胃腸にやさしい発酵食品で、腎を養い自然治癒力を高めること(≒エイジングケア)が期待できるんです」(山口さん)
胃弱対策に、生姜や山椒といった生薬やスパイスを使った辛味噌スープと、魚介出汁にヨーグルトを加えた2色のダブル発酵スープが目を引きます。
「少しパンチが効いた辛味噌と、ヨーグルトが胃腸を元気にしてくれますし、ナツメやクコの実などのスーパーフードも満載ですよ」

薬膳と聞くと、あまり馴染みもなく苦そうなイメージもあったのですが、実際に食べてみると、ほんのり酸味があり、甘くおいしく、香りも芳香でした。食欲をかきたて、具材を優しく引き立てるスープのバランスが絶妙で、お箸が止まらずペロリと間食。
腎を強くすることで、冷えにくい体、老化防止、免疫力向上も期待できるそうです。
そんないいこと尽くしで胃にも優しい薬膳を「自宅でも取り入れたい」という人のために、簡単にできるレシピを山口さんに聞いてみました。
「
昆布、貝、海藻類でとった出汁で作る鍋が簡単ですよ。そこに豆乳を入れて、手羽元を入れて煮出してください。老化予防、美肌、美髪のために、骨のついた手羽元は効果があります。そこに、旬のお野菜を入れれば、もう完成です」
実際に作ってみましたが、本当にパパっと簡単に優しい味のする鍋ができてしまいました!

みなさんの胃の具合はいかがでしょうか。年末にむけて胃の働きを良くすためにも、胃弱鍋や体に良い食材を積極的にとっていきたいですよね。
<文/瀧戸詠未>

ムラタクリニック院長 村田洋子先生
<村田洋子先生 プロフィール>
ムラタクリニック院長。東京女子医科大学を卒業後、同大学の消化器外科に入局し、内視鏡検査を中心にスキルを磨く。「ムラタクリニック」を2003年に開業。消化器内視鏡を中心に診療を続ける。

薬剤師・薬膳師 山口りりこさん
<山口りりこさん プロフィール>
薬剤師、国際中医師、薬膳師。星薬科大学を卒業後、薬日本堂に入社。漢方や薬膳に魅了され、黒龍江中医薬大学日本校・遼寧中医薬大学日本校にて国際中医師・国際薬膳師を取得。より身近に漢方や薬膳を伝えるべく2015年に薬膳鍋「kampo’s」をプロデュース。他にも飲食店に併設した漢方薬店の運営や商品監修などを手掛ける。