とある脚本家からこんなエピソードを聞いたことがあります。
テレビの制作現場で「腐女子」というワードが出た際、あるプロデューサーが訳知り顔で腐女子について語っていたそうです。しかしその内容はトンチンカンで、話がかみ合わなかったそう。
よくよく考えるとどうやらそのプロデューサーは、男性同士の関係性や恋愛を扱った作品を好む女性のことではなく、文字のイメージそのままの
「モテない高齢の独身女性」を「腐女子」と勘違いして話していたようなのです。
“BL好き”“腐女子”とひとことでいえど、その嗜好は多種多様で、根本を理解していないと手を出すのは危ない分野でもあります。そして、彼女たちは性質上想像力が豊富にあり、勘もはたらくので、上澄みだけをすくって適当に作った作品だとすぐ気づかれてしまいます。
彼女たちが本当に満足するものを作るには、ウケに走らずに根本を理解し、自らもそのような趣向がある制作者が生まれなければ難しいのかもしれません。
しかし、昨今はJTのCM(鈴木伸之×北村匠海)やアサヒビールのCM(中村倫也×菅田将暉)、フジテレビ系ドラマ『シャーロック』(ディーン・フジオカ×岩田剛典)など、
男性バディものに見せたBL風味の作品も増えてきています。
雑で粗く、安易すぎるものが増えるのも問題ですが、雑な中にも「狙いが見えて悔しいけどいい……」「この発想はなかった」「まさかこの組み合わせが現実(実写)になるとは」など、好評の声があるのも事実です。
『おっさんずラブ』の新作も、キャラクターやストーリーが認識されていくにつれ、批判の声も少なり、新キャラたちのファンも増えてきたといいます。
納得がいかない声もあるかもしれませんが、今まではねられていた表現の裾野が広がったのは喜ばしいことなのかもしれませんね。
<文/小政りょう>
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦