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宇垣美里が「心の底から軽蔑する」人とは?/映画『家族を想うとき』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。 宇垣美里さん そんな宇垣さんが公開中の映画『家族を想うとき』についての思いを綴ります。
映画『家族を想うとき』

『家族を想うとき』より

●作品あらすじ:イギリスの北アイルランドにある街ニューキャッスルで、安い賃貸アパートに住むターナー家の父・リッキーはフランチャイズ(個人事業主)の宅配便ドライバーとして独立。一見聞こえはよいですが、大手通販のノルマは厳しく、出来高払いで1日14時間週6日働き通しです。  母のアビーはパートタイムの介護スタッフとして、低賃金で時間外まで1日中働いています。  マイホーム購入のため、家族を幸せにするための仕事が、子ども達との時間を奪っていき、高校生の息子と小学生の娘は寂しい想いを募らせ不安定に。そんな中、父・リッキーがある事件に巻き込まれて──。  前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』でカンヌ映画祭パルムドールを受賞した名匠ケン・ローチ監督は引退宣言していましたが、今も拡大し続ける格差や貧困の現実を目の当たりにし、どうしても伝えたい物語として、引退を撤回してまで制作した本作を宇垣美里さんはどう見たのでしょうか?

歯を食いしばっても見てほしい、家族の幸せを奪う非情な労働システム

映画『家族を想うとき』

『家族を想うとき』より

「自己責任」「自分で選んだ道だから」。人を切り捨てるように吐かれるそんな言葉がたまらなく嫌いだ。よくもそんなことを。この映画を見た上でもう一度同じ言葉を言えるなら、言ってみればいい。心の底から軽蔑してあげる。  マイホームを夢見てフランチャイズの宅配業を始めた父。パートタイムの介護福祉士の妻に、高校生と小学生の兄妹。ただささやかな幸せが欲しいだけなのに、非情なシステムのせいで働けど働けど借金は増えるばかり。生活は一向に楽にならない。家族を守ろうと必死になって働き、共に過ごす時間が仕事に奪われるにつれ、溝は深まり、一番大切なはずの相手にすら優しくできなくなっていく。
映画『家族を想うとき』

『家族を想うとき』より

 この頬を伝う涙は誰のためのものなんだろう。なぜだか怒りが収まらない。悔しくって仕方がない。だって、あの家族は誰も悪くないのに。みんなただ一生懸命なだけなのに。私はこの不条理をどう受け止めればいいんだろう。  この作品は容赦がない。救いも許しもない。それでも歯を食いしばって見てほしい。だって、これは他人事ではないから。日本でも、病死した51歳の配達ドライバーの遺族が、委託元の配送会社を提訴している。亡くなる前の時間外労働は月平均151時間に及んでいたそうだ。これは、私たちの住むこの国でも起こっていることなのだ。  原題の『Sorry we missed you(残念ですがご不在でした)』は、イギリスの不在通知表に書かれているメッセージだという。昨日受け取ったばかりの不在通知の背景に思いを馳せ、私の胸の内はただただ苦い思いでいっぱいだ。 『家族を想うとき』’19年/イギリス・フランス/1時間40分 監督/ケン・ローチ 配給/ロングライド photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019 (C)Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2019 <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、モデル・女優業や執筆業などに幅広く挑戦している。
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