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宇垣美里「私の胸には、ぽっかりと穴が開いている」/映画『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
宇垣美里さん

撮影/中村和孝

 そんな宇垣さんが公開中の映画『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』についての思いを綴ります。 『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』●作品あらすじ:1つの事故をきっかけに運命が交わる、世代も国籍も異なった2つの家族が描かれます。  現代のニューヨーク。学生時代からの恋人、ウィル(オスカー・アイザック)とアビー(オリヴィア・ワイルド)は大恋愛ののち結ばれ、子どもの出産を控えて幸福の絶頂にいたその時、事故に遭遇してしまいます。  ニューヨークに旅行中、事故の顛末に深く関わった幼い少年。彼はスペインで、両親と父の雇い主であるオリーブ園のオーナー(アントニオ・バンデラス)の人生を変えていきます…。  本作は、ヒットドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』の企画・脚本・製作総指揮を手掛けたダン・フォーゲルマンが監督をつとめたことでも注目されています。ボブ・ディランの曲に載せて描かれるこの物語を、宇垣美里さんはどう見たのでしょうか?

今はいないあの人も、ちっぽけな私も、壮大な物語の中で生き続けている

映画『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』より

 大切な人ともう二度と会えなくなってしまった日のことを、いまだに忘れることができないでいる。手先がどんどん冷えて足元がぐらついて、何もかもが信じられなくなった。あれからきっと私の胸には、ぽっかりと穴が開いている。  人はいつか必ず死ぬとわかっているのに、自分と自分の大切な人だけは、ずっと変わらずこの日常を過ごしていられると思ってしまうのはなぜなんだろう。会えるときに伝えなきゃいけない。わかっていたはずなのに、十分に伝えることができたと思えたことなんて一度もないし、きっとこれからも何度も後悔すると思う。
『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』より

『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』より

 本作には、ある悲劇的な事故をきっかけに2つの家族に巻き起こる、大切な人との永遠の別れ、幼い過ち、人間の弱さや無力な自分のふがいなさが描かれている。その痛みや悲しみが本当の意味で癒やされることなんてないと、私は知っている。  でも、登場人物たちが歯を食いしばって試練を乗り越えるさまに、一人一人の人生がやがて繋がって導かれる奇跡に、私もなんとか生きていける気がした。  だんだんとあの人の記憶がおぼろげになることに怯えた夜もあったけど、私の中で生きている、人生は共にあると思えば自ずと胸が温まる。独りだと感じることは尽きないけれど、なんてことはない、私の人生すら、多くの人が過去から紡いできた物語の一部、完結することのない壮大な環の1パーツにすぎないのだ。  そう思うとなんだか笑ってしまうほどちっぽけで、気が楽になった。だからこそ、ちっぽけな私の些細な一歩が、巡り巡って誰かの救いになることを願って、今日も私は前を向いて歩いていく。 『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』’18年/アメリカ/1時間57分 監督/ダン・フォーゲルマン 出演/オスカー・アイザック、オリヴィア・ワイルド、アントニオ・バンデラスほか 配給/キノフィルムズ (C)2018 FULL CIRCLE PRODUCTIONS, LLC, NOSTROMO PICTURES, S.L. and LIFE ITSELF AIE. ALL RIGHTS RESERVED. <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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