Lifestyle

貧困・虐待…家出少女たちのリアル。性を搾取されても「自由でいたい」

家出少女はかわいそうなだけの存在ではない

――これまで、10代少女とセックスワークの関係性は、福祉や社会の視点からしか語られてこなかったと思います。鈴木さんが取材で感じた、彼女たちの思いを教えてください。
夜の街

写真はイメージです

鈴木「もちろん、彼女たちは好きでセックスワークをしているわけではありません。そんな中でも、ただやらされるだけではなく、自分の力で自分の道を切り開くために、常に自分なりの“許せること”と“耐えられないこと”のバランスを取って、主体的に戦っています。だから、『かわいそう』とも思われたくない。  そして、その戦いの中で、被害者像に傾くときもあれば自由を得るときもあるというのが、リアルだと感じます。戦略を立て、何かと引き換えに得た自由から、勝ち取ったという達成感や、自力で生きているという尊厳も得ていて、いわば『買われているのではなく、売ってやっている』という思いがまず根底にあり、場面によっては『セックスワークをやらされている』思いが併存している感じです

単純な善意や常識は、彼女たちの邪魔でしかない

――世間一般では、「やらされている」だけの「かわいそうな被害者」として語られることが多いと感じます。 鈴木「僕がこれまで手掛けてきたノンフィクション作品でも、被害の像がブレないように、かわいそうなところを強調してきました。それは、『好きてやっている』とか『自業自得』とかって、差別されたり、自己責任論に貶められたりしないためです。決してそうではないから。  ただ、『里奈の物語』のモデルとなった家出少女の話を聞いたときに、単純な善意や常識的な理屈は、彼女たちにとって邪魔でしかないんだと、価値観そのものを覆されたんです。そこから2年かけて里奈とその周囲に生きた人々の生き抜いてきた歴史を取材し、『里奈の物語』に行きつきました。 ===================  過酷な環境下で、自身の性を搾取されながらも、自由を求めて必死に生きる家出少女たち。かわいそうな存在として取り上げられてきた彼女たちのリアルには、きれいごとでは語れない思いが渦巻いているとのことです。そんな少女たちを長年取材してきた鈴木さんの価値観をも変えさせた里奈とは、一体どんな少女だったのでしょうか?  次回、『里奈の物語』の背景と里奈という少女について聞きました。 ●鈴木大介著『里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)
鈴木大介著『里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)

鈴木大介著『里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)

【鈴木大介さんプロフィール】
鈴木大介著『里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)

鈴木大介さん

1973年、千葉県生まれ。文筆業。長年にわたり、裏社会、触法少年少女らを中心に取材し、著書に『再貧困女子』(幻冬舎新書)『家のない少女たち』(宝島社)などのノンフィクション作品がある。 <文・取材/千葉こころ>
千葉こころ
ビールと映画とMr.Childrenをこよなく愛し、何事も楽しむことをモットーに徒然滑走中。恋愛や不倫に関する取材ではいつしか真剣相談になっていることも多い、人生経験だけは豊富なアラフォーフリーライター。
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ