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貧困・虐待…家出少女たちのリアル。性を搾取されても「自由でいたい」

「家には帰りたくない」――栃木少女連続監禁事件で、犯人宅から発見され保護された少女の言葉に、衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。
考える女性

写真はイメージです

 10代少女が巻き込まれる事件の背後には、少女たちの声にならない訴えが潜んでいることも少なくありません。ただ、明るみになるのは氷山の一角。今この瞬間にも、どこかでサバイブしているかもしれないのです。  そんな10代の家出少女たちを長年に渡り取材し続けてきた鈴木大介さんは、これまで『最貧困女子』(幻冬舎新書)や『家のない少女たち 10代家出少女18人の壮絶な性と生』(宝島社)などのノンフィクション作品で、家出少女の実情を世に伝えてきたルポライター。このたび、ひとりの家出少女の半生を物語として綴った『里奈の物語』(文藝春秋)を11月27日に刊行しました。そこで、家出少女の真の姿に迫るべくお話を聞きました。

「自由を奪わないなら助けてほしい」

――家出少女たちを長年に渡り取材されてきたのはなぜですか? 鈴木大介著『里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)鈴木大介さん(以下、鈴木)「家出少女への取材は、2000年代前半のミドルティーンのプチ家出ムーブメントを機に始めたのですが、少女たちの中に、数ヶ月間家に帰っていない本気の家出少女が混在していることに気付いたんです。夏休みに1〜2週間ほど家出をして遊びまわるプチ家出とは違い、夏以外の過ごし方や住む場所、経済面などたくさんの問題があり、どうするのか気になったので、追い続けることにしました」 ――彼女たちはどのように過ごしていたのでしょうか? 鈴木「本気の家出少女たちには、身の危険を伴う虐待や貧困、一切の自由を奪うような過剰な束縛、飢えを感じるような育児放棄など、家庭に極めて深刻な問題を抱えているという共通点がありました。そのため、深夜に街中を歩いて補導されれば、親元に帰されるという恐怖があります。  でも、家を飛び出したはいいけれど、未成年なので、賃貸住宅はおろか携帯電話すら契約できない。そんな環境を自力で生き抜くために、日々売春をして、毎日をラブホテルで過ごしていたり、売春やナンパを介して知り合った男の家を転々としているようなケースが多かったんです。  そんな中で、最も彼女たちにとって都合の良い環境の提供や理解を示すのが、援助交際や組織売春のスカウトか、すでにそこで働いている同環境の少女たち。結果として、アンダーのセックスワークに回収されていくことが、彼女たちの不適切なカタチでのセーフティネットになっていました」

彼女たちが「福祉」を信頼しないわけ

――福祉などの支援に頼ることはできなかったのでしょうか?
家出少女に差し伸べられる手

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鈴木「家出少女は児童福祉の対象ですが、実際は福祉と非常に折り合いが悪いんです。第一に、彼女らの多くが飛び出してきた元来の居所で問題行動を繰り返しているケースが多く、地元の児童福祉に何度も接触し、その都度満足のいく支援を受けられなかったり、理解してもらえないどころか懲罰の対象とされたり、劣悪な環境の家族に無理やり戻された経験があるから。  加えて、彼女たちは、たとえ自分の性を搾取されても、劣悪な環境であっても、自力で生きていることや、自分で自由を勝ち取ったことは誇りであり、誰にも侵されたくないと思っている。なので、彼女らの真情を理解しない一方的な支援の手に、過剰なほどの反抗心をみせる傾向があるからです。  徹底的に自由を奪われ続けてきたから、やっと手に入れた自由を、もうひとかけらも奪われたくないんですよね。だから、親元に戻されたり、福祉という枠の中に再び閉じ込められたりすることを、何よりも拒絶するんだと思います。『一切自由を奪わないでくれるなら、助けてほしい』というのが、彼女たちの本心だったようにも思います」
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「買われているのではなく、売ってやっている」
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