
「夫には交際中に過去を話し、子どもを持てる自信がないと言いました。優しい人なので、『
僕は亜矢が苦しむのなら、子どもはいなくてもいい』と言ってくれました」
しかし、職場の同僚から子どもの写真を見せられることが増えた翔さんの心境は、最近少し変化してきているよう。数ヶ月前、食事の際にポロっと「
子どもがいる生活って、どんな感じなんだろうな」と目を細めることもあったそうです。
そんな夫の言動を見て、亜矢さんの心は揺らいでいます。
「好きな人との子どもなら愛せるのかもしれない。でも、母親ってどんなものなのかが分からない。親から抱きしめてもらったことがない私は、
産まれてきただけで無条件に愛でられる我が子を羨ましく妬ましく思ってしまいそうで……」
毒親サバイバーたちにとって「我が子」というのは、自身の辛い幼少期を蘇らせる存在になってしまうこともあるもの。亜矢さんのような境遇から「子どもを持たない」という道を選んでいる方は実際、少なくないように思えます。そうした人たちを守るためにも、「我が子はかわいいから愛せる」「産んでみれば心境が変わる」といった言葉を無責任に言わない温かさを持ち合せたくなります。
「子持ち」でも「子なし」でも、本人が幸せならいい。そう大らかに受け止められる人が増えれば、私たち女性は今以上に生きやすくなるはずです。
<文/古川諭香>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:
@yunc24291