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30代無職でボロボロの私は、猫漫画をレシートの裏に描き続けた/ぶぶちよ

 買い物をした際にもらうレシートは、レジ横のゴミ箱に捨てたり、くしゃくしゃとポケットにつっこんだりと、なかなか大切にされない小さな紙切れ。その裏に絵を描き続け、ツイッターで話題になっている作家さんがいます。 雨の日『ぶぶちよ絵日記』と題して、二足歩行の猫に擬態した人間の日々の小さなできごとを描いている、bubuchiyo(ぶぶちよ)さんに話を聞きました。
ぶぶちよ絵日記

昨年12月には書籍にも

裏紙だとリラックスして描くことができた

絵日記用の画材セット

ぶぶちよさんがいつも持ち歩いている、絵日記用の画材セット。0.28㎜の極細ペンに、画鋲入れを使った自作のパレット

――ぶぶちよさんは小さなレシートの裏に、さらに小さな絵を描いていますね。なぜそこに描こうと思ったのでしょうか。 ぶぶちよ:子供の頃から、チラシやカレンダーの裏に絵を描くことが好きでした。立派な紙だと「ちゃんと描かなきゃ」と身構えてしまい、のびのびと描けない子供だったんです。それが、裏紙だとリラックスして描くことができました。  レシートに描くようになったきっかけは……。何年か前に心が折れることがあって、仕事をやめて実家で引きこもる様に暮らしていた時期があって。当時、ネットで「30代 無職 女」とか「生きづらさ」などと検索しては、そこに出てきた悪口を見て落ち込んでいました。  そこから辛うじて外出できるようになったのですが、出かけるのはもっぱら実家から自転車で20分ほどのスターバックスとスーパーでした。スーパーで買い物をしてスターバックスでお茶をしながら、レシートに絵を描くようになりました。  最初にツイッターに載せたのは、スターバックスから見えるスーパーの風景でした。スターバックスのレシートって、横幅が広くて絵が描きやすいんですよ。
レシートの裏の絵

レシートの裏のほかに、飲食店の紙ナプキンやノートの切れ端などにも作品を描き続けている

――お店によってレシートの違いがあるのですか? ぶぶちよ:全然違います。スターバックスは幅が広いんですが、紙厚はダントツで薄いんです。同人誌を作る時にレシートをスキャンしたのですが、裏の文字が写ってしまって加工が大変でした。  最近はツルツルの感熱紙が多くなりましたが、昔からある地元密着スーパーなどのレシートは、ザラザラの厚い紙の確率が高いです。スーパーの大型店化が進んで入手しづらくなりましたが、それがいちばん描きやすいですね。雑貨、アクセサリー、洋服屋さんなどおしゃれな店のレシートも幅広で厚いものが多く、かなり絵が描きやすいです。

やっぱり他人と話したい、誰かとつながりたい

犬の引っ越し――ツイッターに載せるようになったのはいつからですか。 ぶぶちよ:忘れもしません、2017年2月のことです。ツイッターのアカウントは何年も前に作ってあったのですが、ずっと放置していました。無職になってからは時々親と話すぐらいで、人との交流がほとんどなくなっていました。  地の底を這うようなボロボロの日々から少し回復して、やっとスーパーに行けるようになった頃でした。「やっぱり他人と話したい、誰かとつながりたい」と思うようになりました。そこで初めてレシートに描いた風景をツイッターに載せたんです。  最初はほとんど反応がなくて、3つ「いいね」がついた日はすごく嬉しかったです。フォロワーさんからコメントをもらい、泣いてしまうこともありました。  ずっと自分を出してはいけないと思っていたので、当初は絵だけで、文字は書けませんでした。文字が書けるようになったのは、その年の4月のことでした。

子供の頃から集団に入っていけず、仕事場にもなじめずに職を転々

奴隷――とても鮮やかでかわいい絵を描かれますが、お話を聞いているとなかなかの闇を感じますね。 ぶぶちよ:闇は私の一部です。物心ついた頃から集団が苦手で、入っていくことができませんでした。小学生の頃は「奴隷」と呼ばれてイジメられていました。挨拶もできず、何かを伝えようと思っても声が出てこなくて、ずっと「暗い」と言われ続けてきたんです。  今思うと緘黙症(かんもくしょう=特定の状況・場面では話すことができなくなる疾患)だったのではないかと思います。家では話せるので、親に話しても理解してもらえず「学校に行きたくない」と言ってもダメだと言われました。  高校では無理して部活に入り、「普通」のフリをしていました。スパルタ指導の運動部で、休みなく活動をしていました。少しの居場所はありましたが、遊ぶ時間もなく、友達もいませんでした。  その後、美術大学に進学しました。中学生くらいから描きたいものがなくなっていたので、急に「好きなことをやっていい」と言われてもどうしたらいいのかわからず、隙のないよう1日中バイトを入れていました。  美大を卒業してからは、家具販売店、精肉店、服飾店、イベントスタッフ、会社事務、保冷トラックでの配送など、仕事場になじむことができずに職を転々としました。それが約20年続きました。  組織の中で「正しい振る舞い」を探して過度にがんばろうとして、毎回人間関係でダメになってしまう。「あの人に文句を言われるのが怖い」とか、体調を崩しても「倒れていないからまだ働ける」などと思ってしまうんです。ちょっとしたことをするにも、世間の評価を軸にしながら行動していました。  そんな私を救ったのがツイッターのフォロワーさんたちでした。とにかく、「いいね」がつくのが嬉しくて、レシート裏のイラストをツイッターに載せることが日課となりました。そこに言葉がなくても、共感してくれる何かがあるんだと思うと、「こんな自分でも認めてもらえるんだ」と、真っ暗だった心に少しずつ明かりが灯ってきました。
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私と同じく生きづらい人へ
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【bubuchiyo作品展 鳥獣張子】1月8~12日(12:00~20:00)、東京・西荻窪の雑貨店「FALL」で開催。ぶぶちよさんが制作した張り子や茶筒の展示・販売のほか、初の著書の販売も。ぶぶちよさんは8、11、12日は終日在廊予定。9、10日は未定。


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