熱心な宗教信者の両親に“しつけられ”、出産が恐ろしくなりました…
子どもを持たない人生を選んだ人は、周囲から色々な言葉を投げかけられることがあるようです。しかし、その選択に至るには様々な体験によって築き上げられてきた価値観が大きく関係しているように思います。
「どうせ壊れるものを紙で補強するのが、結婚。出産は女性という性の象徴で恐ろしいです。」。結婚や出産に対するイメージを尋ねた時、そう本音を打ち明けてくれたのは、43歳の楓さん。なぜ楓さんはこうしたイメージを持つようになったのか。そこには壮絶とも言える幼少期の体験が関係していました。
現在、結婚願望はなく、恋人もいないという楓さん。なぜ結婚を「どうせ壊れるもの」と思うのかと率直に尋ねると、「自分を受け止めてくれる人がいるとは思えない」との答えが返ってきました。加えて、「子どもは好きですが、自ら産むのは恐ろしいと感じてしまう」とも漏らします。その理由は楓さんが乗り越えてきた“宗教虐待”にありました。
両親がとある宗教の信者だった楓さんは、両親を「善人」と表現し、善人であったがゆえに心を傷つけられました。「両親は善人だったからこそ神に従えない人を許せませんでした。仲間以外との関わりは最小限に留めますし、神の教えに反すると我が子であっても本人の幸せのためにと体罰を加えます。」中でも印象に残っているのが、ゴムホースを使った虐待。両親は50㎝ほどに切ったゴムホースで楓さんを何度も何度も叩いたと言います。
また、両親は善人であるがゆえに、神の教えをないがしろにはできなかったそう。何かあるたびに「でも聖書にはこう書かれているのよ」と言われるのが楓さんの日常でした。「素直に従えばよしで、従わなければ叩かれます。好きな漫画も捨てられ、ゲームやテレビは許されず、ひたすら型に押し込められていくように感じました。」
世間から見れば、しっかりとしたいい両親。しかし、楓さんの記憶には子どもに自分の思想を押し付け、心身の自由を奪う両親の姿が残っていました。
偏った教育をされる中、楓さんの「女性性」「男性性」への認識を決定づける出来事が起こります。それは性に目覚めた頃のこと。自宅では神の教えに基づき、性的なことはタブーでしたが、性に興味を抱き始めた楓さんは得た知識をもとにお風呂場で股間にシャワーを当ててみようと思い立ちます。
しかし、その姿を見つけた母親は「気持ちいいの? 気持ちよくないならやめなさい」と楓さんに言いました。「それ以来、女性性に嫌悪感があります。気持ちいいならしてもいいと言うわけでもなかったくせに、自分を守るような言い方をしつつ、他人のデリケートな部分に踏み込んでくる母親に怒りがわきました。」
性に関することはたとえ親子であっても、むしろ親子だからこそ乱雑に触れられたくないもの。母親に対する激しい憤りは、出産への認識にも影響を及ぼしました。「出産は女性性の象徴のように感じられ、気持ち悪いと思うのです。」
ゴムホースで何度も身体を叩かれて……

「女性性」と「男性性」への嫌悪感
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