「私つい『はぁ?あの人がそんな事する訳ねーだろ?人を見た目だけで判断する事しかできないなんて哀しい人間だね。こんな雪で寒い中わざわざ助けてくれた人に感謝もできないなんて、バカはお前だろ!』ってブチ切れちゃって」
Kくんに車を止めさせると、そのまま凛子さんは電車を使って帰宅したのだとか。
「その後、Kからも連絡がパッタリと途切れ自然消滅しました。今思えば、いくら見た目が可愛いからって、あんな子供っぽい子と付き合う私も私ですね(笑)」
真冬に恋人を失ってしまった凛子さんですが、後悔はしていないそうです。
続いては、今交際している彼と、冬が終わっても別れたくないという女性の話です。
井上美也子さん(仮名・27歳・派遣社員)は、冬があまり好きではありません。
「まず寒いってだけでテンション下がりますし、かといって着込み過ぎて太って見えるのも嫌で。夕方になるとすぐ暗くなっちゃうし、なんだか寂しい気持ちになるんですよね」
そして、美也子さんには治したい癖があるそうで…。
「寒いとそんなに好きって訳ではなくても、告白されるとついOKしちゃうんですよ」
人肌恋しくなるからか、寒い季節に恋人がいないと孤独に押しつぶされそうになり、夜中に何度も起きてしまい眠れなくなってしまうんだとか。
「そうやって冬に付き合い始めた恋人と、春になって別れるってパターンがホント多くて。私、暖かくなってくるとどんどん元気になってきて、夏なんてほとんど寂しい気持ちにならなくなるんですよ」
写真はイメージです
そして、現在お付き合いしているYさん(33歳・会社員)とも、やはり冬に付き合い始めたそう。
「Yは私の友達が働いているバーの常連さんで、私がたまに遊びに行くと毎回話しかけてくれて。そうこうしているうちに『美也ちゃんと付き合いたい』と言ってくれたので」
Yさんは明るくて、ワイワイ仲間を集めて遊ぶのが好きなタイプです。
「ホント私とは真逆の性格だし、Yの集まりに参加した事はないけれど…連絡がマメだし、スゴく優しくしてもらっているので、ありがたいなと思っています」
今年こそ、このまま春や夏までYさんと仲良くやっていけたらなと思う美也子さん。
「もういい加減、寒くて寂しい気持ちをまぎらわすために、冬の間だけ一緒に居てもらうだけなんて止めにしたいんですよ。もう若くもないし、結婚願望もありますしね」
だったら春や夏に恋人を作ればいいのでは?と思いますが…。
「私も出来たらそうしたいんですが、なにせ寂しくならないから、そんな気持ちにならないんですよね」
そして男性も、美也子さんが寂しさを感じている時にしか誘ってこないそう。
「もしかしたら、私はまだ本気で誰かを好きになった事がないのかもしれませんね。でも、本気で愛せる相手に今後絶対に出会える保証もないし…どうしたらいいか分からなくなります」
Yさんにときめいているかというと、ちょっと違う気もしますが「私みたいな誰かを本気で愛した事もなく、寒さや寂しさに異常に弱い未熟な人間と付き合ってくれる事に感謝しなければならない」と思うようになってきたのだとか。
「きっとYさんは、春になっても夏になっても変わらず優しいままだと思うんです。それに比べて私は、冬は寂しいから一緒に居たい、夏は寂しくないからいいや、みたいな子供じみた甘えた考えで。ホント改めたいなと思っています」
「そんな風に思えたのは、今年が暖冬だからですかね」と苦笑いする美也子さんなのでした。
―シリーズ「
冬の恋愛悲喜こもごも」―
<文&イラスト/鈴木詩子>
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鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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